「いや」

「…」

「いやよ」

「…」

「どうして」



「もうお前を見れない」


「…そんな」




紅のキレイに作られた目からぽたりぽたりと涙がこぼれるのに何の感情も生まれてこない。



「ごめんな」

「…」



泣くにつれ、無色の涙は黒ずんでいった。

涙の通った道は灰色に、白かった鼻は赤くなった。



ああ、泣かないで、





見たくないよ。









なけないマスカラ










冬がきて、木々が枯れた。
家の近くに生えている大木の葉ももう何度目になるかわからない紅葉を迎え、今また散っていった。




「別れた?なんで」

「んーなんとなくな」


シカマルは元が細い目をいっぱいに開いて驚いた。背筋も伸びて俺を見る。



「意外」

「だろ」


ひとしきり驚いた後はやはり寒さに負けたのか口までマフラーに埋め、猫背に戻った。



「わりと似合ってたと思うけど」


「そうだなあ」



苦く笑って、シカマルを見た。





鼻の頭があかかった。











「飯いくか?」

「いや、今日は帰るよ」

「そうか」




手にいれられないものほど欲しいのか
心の中で激しく地団駄を踏んだ。



「どうしたアスマ?」

「いや」

「そんなに残念?」

シカマルがわざとらしく笑って言ったので、


「ああ、すげえ残念」

って、嘘嘘しく聞こえるように本音を伝えた。



「はは」



シカマルは笑うと眉毛が困ったようになる。


ハの字に下がる。




逃がしたくなくって
離れたくなくって
思いが大きくなって




キレイに纏められた頭をぐっと引き寄せた。









「寒い、とか?」

「いや」

「じゃ、なにこれ」


「んー、すきだ」



「は


 ?」




俺の中でシカマルはさっきよりも驚いた顔で上を見上げていた。



「ふざけてんのか」

「いやいや全く」


「道端ですよ」


「どこで告白したっていいだろ別に」


「いや、ま、うん」



目が泳いで、思考回路をフルで動かして今の状況を理解しようとしているようだった。



「頭のいいお前でもこの展開は考えきれなんだか」


「…」








すーっと冬のにおいとシカマルのにおいが薫って、これがずっと続けばいいなとかどうしようもないことを考えていたら、小さい頭が少し震えた。



「泣いてるのか?」

「…」

「しかまる?」


「ん」




頬に手を述べたらやんわり滴がかかって暖かかった。


「しかまる、どうした」




「…あすま、嬉しいのかも、俺」



そう呟き、見上げた顔は泣いていた。




無色の涙はそのままきらきら輝く無色。

涙の道は肌の色。

鼻は寒さで赤くなったままだった。






「ずっと…あきらめてた」

「うん」



「すき、だった、ずっと」


嗚咽が混じるくらいに泣いくシカマルを更に力を込めて抱きしめた。



「俺も」


「…うん」

「だから別れた」





「あすま、すき」


「俺も」



無色の涙はそのままきらきら輝く無色。

涙の道は肌の色。

鼻は寒さで赤くなったままだった。



「なかないで」














愛しすぎるから












081213

好きだった時なら許せるマスカラ流れライナー落ちファンデーション崩れ

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