「俺は別れるってなっても、しばらく他に好きな奴とかは作れないと思う」
「そうか」
「別れてもいいと思ってるか?」
「…ああ」
仕方ないと思ってる、と悲しく言われた。
ほんとは別れたくないと言ってほしかった。
「…そう、だよな」
「今は仕事が結構大事な時期だからお前にばかり時間は割けない」
「別に…」
「でもそうしないとお前は機嫌わりぃだろ」
「…」
そんなことなくない、から何も話せなかった。
嫌いなメンマも今なら食べれた。
「そうゆんは違うと思ってよ」
アスマは箸をおいて俺を見た。
「お前は頭もいいし、話してて本当に楽しかった」
そう言って前髪の生え際をそっと撫でてくれたけど、自分が想っていたよりもアスマは俺のことを想っていてくれなかったのか、と心臓がピリピリ痛んだ。
「俺は話してておもしかったとか、頭いいとかそんなレベルであんたのこと好きだったわけじゃない」
そんなとこじゃない。
「その、わけわかんねえくらい虫歯がない歯とか、いみわかんねえけどそゆとこ本当に本当に好きだった」
そう言った後のアスマの目がまんまるで、多分その光景を俺は一生忘れないと思う。
081216