今日は全休なのに。
どうして俺は今大学にいるの。








M412








校門を抜けて、学食の脇を通り、林をくぐったらその棟は姿を現す。


西日しか入らない年中湿ったエントランス。コンクリート打ちっぱなしの壁。そんな建物の中にあの人はいる。









「せんせ、アスマ先生」

「お、どしたよ」

「ん、ちょっと姿見えたから、偶然」

「4階まで息切らして登ってきた奴のセリフじゃあねえな」


ブハっと吹き出して、入れよと肩をたたいてくれた。


俺はいつもつまらない強がりをして、

アスマはいつもブハっと笑って肩をたたく。









「組織におけるそのリーダーと…」

「何だ、読むか」

「読まね」


アスマが煎れてくれた緑茶を飲んだ。
初めて会ったときはコーヒーだった。


俺は緑茶をこよなく愛している。




「今日のお茶、うまっ」

「だろーじいさんの土産だ」



「卒論は」

「まーぼちぼち」

「おまえの極めた論文は興味ある」

「まーぼちぼちな」





こんな他愛もなくゆるやかに過ぎていく時間が好きだ



どーとかこーとか色々言ってるけど


ずっとこのままがいいとか思っちまってるよ。






うん、なんでだろ。






「どーれどれ、ラーメン行くかー」

「教授会は」

「ブッチだブッチ」


下向いて笑って、こんな人に給料あげるために学費払うのヤダなって思った。


「じゃあ焼肉な」

「じゃあ割り勘な」

「ありえない!」



またブハっと笑った。






胸騒ぎがして、ぎゅっとなった。







一瞬の後気付く、
そして全ての事象に理が、







俺これ恋だ。








08/12/03

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