うさぎトレーナーシリーズ
□うさぎトレーナーと愉快な仲間たち
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「まりん(ケロマツ)。あなた以外の他の仲間はね、みんな、たまごの時に密猟者に親を殺された子たちなの」
私の言葉に、まりんもRさんたちも目を見開く。
「しょうれん(リザード)の群れが襲われてる時に、たまごの時から声が聞こえてた、れいしょう(ルカリオ)の叫びに私が気づいて、みんなを密猟者から助けられたの」
「あの、リザードの進化前ヒトカゲはカントーのポケモンですよね。ニンフィアの進化前のイーブイはカントーにもいますが、他のリオルはシンオウ。モンメンはイッシュ、デデンネはカロス地方のポケモンのはずですが?」
「はい。その密猟者たちは色んな地方でそんなことをしてたみたいで・・・それで、カントーにいる時に捕まえられたんです」
「カントーにいる時?ユウリンちゃん、カロス出身じゃないの?」
コウダイ君、ダイちゃんに聞かれる。
「うん。私はカントーのマサラタウンにいたの。カロスには、つい最近引っ越してきたんだ。その前はイッシュ地方にいたよ」
「イッシュ?ボクたちはイッシュ出身だよ」
Rさんが教えてくれる。
「そうなんですか?同じですね」
「それにしても、密猟者に出会うなんて大変でしたね」
リジュンさんが心配そうに言う。
「そうですね。でも、みんなを助けられたから良かったです!博士には怒られちゃったけど。あ、博士っていうのは、カントー地方の博士でオーキド博士っていうんですけど」
「あれ?博士にはって、ユウリンちゃんの母親には怒られなかったの?」
ダイちゃんの質問に、まりんを撫でていた手が止まる。
「ユウリン?どうしたの?」
Rさんが心配そうな顔で、俯いた私の顔をのぞきこむ。
「ゴメン!聞いちゃいけないことだったみたいだね」
ダイちゃんが謝ってくる。
リジュンさんは不思議そうな顔をしているのが見えた。
リジュンさんはママに連絡したこと知ってるから、母親が怒らないことがおかしいと思ってるんだろうな。
「・・・私、マサラタウンの森の中で赤ちゃんの時に保護されたんです」
《ユウリン!そんなことまで話す必要はない!》
「ううん、れいしょう。ここから話さないと、私のダメなところも説明できない」
「ユウリンのダメなところ?」
「はい。Rさん、ダイちゃん、リジュンさん、私、一部の人間が怖いんです」
私の告白に、3人は驚くけれど、話を続けた。
一気に言ってしまわないと、話せなくなりそうだから。
「保護された私は、オーキド博士に引き取られました。というのも、森にいる間はポケモンたちが私を守り、育ててくれていたみたいなので、ポケモンのいる研究所の方が良いだろうって。でも、どこから来たかも分からない私は町の子たちから『親のいない変な子』って言われてたんです。その子たちの親も、博士の前では私にもニコニコ話してるのに、私だけの時は『うちの子に近づかないで』って。まぁ、仕方ないですよね。どこの誰かも分からない人間なんですから。だから、ダイちゃんの笑顔が嘘だって分かったの。その人たちの笑顔と同じだったから」
「・・・ゴメンな」
「謝らないで!しょうがないよ。ダイちゃんたちは、トレーナー嫌いなんだから」
ダイちゃんが申し訳なさそうな顔で謝るので、慌てて言った。
「それに、博士も優しかったし、同じ町に住むサトシって男の子や、そのママさん、博士の孫のシゲルも優しくて一緒に遊んだりしてたんですよ。シゲルは博士の孫だから、自分が側にいれば、子供たちは何も言えないって言って、側にいてくれたし、サトシも私をかばって怒ってくれてたし、ポケモンたちも仲良くしてくれてました。それに、今は新しい家族がいますしね。6歳の頃に出会って、私を養子にしたいって言ってくれたんです。パパにママ、それに歳の離れたお兄ちゃんができました。今はパパとお兄ちゃんはイッシュにいて、私とママはカロスにいるんですけどね。ママは元サイホーンレーサーで、その指導のためにこっちに来たんです。引っ越した翌日に旅立つなんて、思いもしなかったんですけど。優しい人たちに囲まれて、私、幸せだと思います。きっと、そんな人たちがいなければ人間が大嫌いだったかもしれません。でも、まだ怖いんです。密猟者たちみたいな酷い人間がいるってことを知ってるから、だから、私・・・大人が特に大人の男の人が怖いんです」
「・・・ボクたちと話す時、ルカリオが言ってたのは、このことだったんだね」
Rさんの言葉に頷く。
「あの、ではなぜ私たちとの旅を許してくれたんですか?」
リジュンさんが遠慮しながら聞いてきた。
「Rさんたちは、違うって思ったから。ポケモンが大好きだし、それに、私、いつまでも怖がってばかりでいたくないんです!私も、強くならないと・・・!」
顔を上げて、力を込めて言う。
すると、みんなが私の頭を撫でてくれた。
そして、
「ボクも頭を撫でて良い?」
「へっ!?は、はい!お願いします!」
Rさんに聞かれ、緊張しながら答える。
フワッと優しくて大きな手が頭を撫でてくれる。
「オレもいい?」
ダイちゃんにも頷く。
「私もいいですか?」
リジュンさんにも言われたので、頷いた。
「あなたは私たち大人に慣れることを、私たちはあなたからトレーナーについて学ぶことにしましょうね」
優しい声で言われて嬉しかった。
「はい。これから、よろしくお願いします!」
「こちらこそ!」
Rさんが言い、ダイちゃんとリジュンさんが笑顔で頷く。
「ところでさぁ、ユウリンちゃん、オレにはタメ口なのに、Rとリジュンには敬語だよね。Rとリジュンが頭撫でる時も緊張してたみたいだけど、オレの時は大丈夫そうだったじゃん?なんで?」
「だって、ダイちゃんは大人じゃないでしょ?私の少し上くらい?」
その私の発言に、3人は笑いだす。
「えっ!?なんで笑うんですか?」
「ユウリンちゃん。オレ、こう見えても18!こん中じゃ、一番年上なんだよな」
「へっ!?Rさん大人じゃなくて、リジュンさんが1番年上じゃないんですか!?」
その言葉に、ダイちゃんはお腹をかかえて笑いだし、Rさんは肩をふるわせ、リジュンさんは眉間にシワをよせている。
「ユウリン、リジュンはコウダイの2コ下の16。ちなみにボクは14だよ!まぁ、気にすることないよ?いつも間違われてることだしね」
Rさんはそう言ってくれたが、リジュンさんに申し訳ない!
「ごめんなさい!リジュンさん!」
青ざめながら、頭を下げる。
「別に気にしてないですから、大丈夫ですよ。頭を上げて下さい。Rの言う通り、よくあることですしね」
「でも、嫌な気分になったでしょう?」
「まぁ、この中で1番精神的に大人なのは間違いないので、そう見えるんでしょう」
「確かに、落ち着いた感じがします!」
「ええ。なので、気にしなくて良いんですよ」
私の言葉にリジュンさんはニッコリと微笑む。
Rさんは不機嫌そうな顔で、ダイちゃんは苦笑いしていた。
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