うさぎトレーナーシリーズ
□番外編『Rたちの旅2』
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3・まだ、これから
しばらく意味不明な石の並ぶ道を歩いていたら輝きの洞窟で会いたくもなかった謎の組織、フレア団の男があらわれた。
あっちもオレらに気づいて、意味不明なことを言ってくる。
Rがオレのかわりにツッコム。
3000年前がどうとか言ってるが、詳細は忘れたか知らないらしく、今度はオレがツッコミをいれる。
フレア団の男いわく、スマートにリベンジしてくるらしい。
だが、ユウリンちゃんがバトルする。
これは、オレたちがゲットしたばっかりだからだろうな。
男が出してきたのは、デルビル。
こいつのタイプはRがゲットしたから分かる。
炎・悪タイプ。
ユウリンちゃんは、れいしょう(ルカリオ)の波動弾で倒す。
その表情は、やっぱり苦しそうだ。
悪人に使われているだけの、罪のないポケモンに攻撃しなきゃいけないのが辛いんだろう。
次はゴルバット。
進化したのか。
ユウリンちゃんは、めいりん(デデンネ)の10万ボルトで速攻で倒す。
またも、崩れ落ちる男。
ユウリンちゃんは、普段とはまったく違う冷たい声で、
「あんたみたいな悪いやつに負けたくないだけよ!さぁ・・・」
と言った。続く言葉は、ポケモンを解放しろ、だろう。
プラズマ団の言っていた、ポケモンの『解放』とユウリンちゃんの言う『解放』。
同じ言葉なのに、意味の重さが違う。
ユウリンちゃんは、ポケモンのために『解放』を願っている。
プラズマ団は、自分たちのためにポケモンを『解放』しようとしていた。
男はホロキャスターで連絡をとり始めた。
ユウリンちゃんは、その隙に捕まえようとしたが、男がいきなり声をあげたので、驚いて足を止めてしまう。
そうだよな。
もともと、大人の男が苦手なユウリンちゃんだ。
ここは、オレが行くべきだった。
新しいミッションをもらった、という男をRの号令で追いかける。
しかし、別のフレア団の連中に足止めをくらう。
その度にバトルするユウリンちゃん。
フレア団のスーツは似合わないと言われ、
「そんなもの、着たくもないわよー!!」
と絶叫するユウリンちゃんを、Rがなだめ、また走り出す。
そして、追いかけているうちにセキタイタウンに着いてしまった。
キョロキョロ、フレア団を探す。
あの目立つ赤スーツを素早く見つけ、ユウリンちゃんに知らせる。
追いつくと、男はこう言った。
「いいか!オレたちフレア団は、10番道路の列石やとんでもないお宝を使ってハッピーになってやる!世の中、力を持つヤツがスマートに勝利するのさ!」
その言葉に、戸惑う。
ユウリンちゃんもなぜか戸惑っている。
そうしているうちに、男は走り去る。
追いかけようとすると、ライバル君(キガク)がやってきてフレア団を見なかったか?と聞いてきた。
見たと言って、追いかけようとするユウリンちゃんを、そっちは行き止まりだと言うライバル君。
じゃあ、あの男はどこに言ったんだ?
ライバル君も疑問には思ったが、行き止まりに行っても仕方ないと思ったのか去って行った。
ユウリンちゃんは、一応確かめたいと、オレたちに了承をとってから行ってみるが、ライバル君の言った通り行き止まりだった。
悔しそうなユウリンちゃん。
リジュンがユウリンちゃんに気持ちを切り替えるように言い、オレも明るく話しかけ、Rも励ましたかいあってユウリンちゃんはなんとか気持ちを切り替えれたようだ。
だけど、オレの心の中はあの時取り逃がしたことでいっぱいだった。
忘れていた。
あの時、ユウリンちゃんが大人の男が苦手なことをちゃんと覚えていれば、何か変わっていたかもしれない。
ポケモンセンターに行き、ポケモンを回復させ、オレはさっさと風呂に入るとベランダで1人で自己嫌悪していた。
「コウダイ、大丈夫か?」
「R・・・」
「お前だけじゃない。ワタシやリジュンも同じ思いを抱いている。あの時、ユウリンじゃなく、自分たちが捕まえようとしたら良かったと」
「そうです。私たちと旅するようになって、研究員の方々とも普通に話せるようになっていたので失念していました。コウダイ、あなただけの失態ではありません」
「リジュン・・・」
「コウダイ、これからだ。『トレーナー』としても、ユウリンの旅仲間としても。ワタシたちはまだまだで。だから、これからできることをやっていけばいい」
まだ、これから・・・。
「Rの言う通りです。私たちはまだ、これからですよ。とりあえず今は、トライポカロンに挑戦するユウリンちゃんを応援することに専念しましょう」
「そうだぞ、コウダイ。ユウリンが心配していた。お前の元気がないように見えるとな」
「ユウリンちゃんが?」
「ああ。食べ過ぎだと、フォローしておいたから安心しろ」
「そのフォローヒドくね?まぁ、心配かけたまんまよりマシだけどさ」
「まぁ、Rのフォローですから。期待しないのが得策です」
「リジュン。どういう意味だ?」
「どうせ、ユウリンちゃんがコウダイを気にしているのが気に入らなかったんでしょう?」
「ゔっ・・・」
「図星かよ・・・R、心狭すぎ」
「うるさい」
「ハハッ!!」
「あっ、みんな、ここにいたんだね?」
「ユウリン(ちゃん)!!」
ベランダに、ミント色のパジャマを着たユウリンちゃんがやってきた。
風呂上がりなのか、頬が上気してバラ色をしている。
いつもは低い位置のツインテールの髪を下ろし、サラサラと夜風になびいている。
R〜、暴走すんなよ〜!
「良かった!ダイちゃん、元気になったみたいだね!」
苦笑するオレを見て、ユウリンちゃんが言う。
「フレア団のことは気になるけど、みんなの言葉のおかげで集中できるよ!それに、ダイちゃん楽しみにしてるって言ってくれたから、めいりんと頑張るね!」
笑顔で言うユウリンちゃん。
オレが、なんで暗い顔してたかも聞かないし、オレを元気づけるように話してくれる。
守りたい。
この、誰よりも優しい少女を。
「ユウリンちゃん、湯上がりに夜風は冷えますよ。さ、もう部屋に戻ってパフォーマンスのことを考えた方が良いと思いますよ」
「そうだよ、ユウリン!部屋まで送るよ!」
「Rさん、部屋は隣よ?大丈夫!1人で戻るわ!」
そう言って、残念がるRを残し部屋に戻るユウリンちゃん。
オレたちもトレーナーになったことで、部屋を別々にしたんだよな。
「なぁ、R、リジュン。オレ、ユウリンちゃんを守りたい。あの、優しさを。明るさを」
「ワタシもだ」
「私もですよ」
3人で顔を合わす。
まだ、これから。
これから、頑張るんだ。
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