anotherフォーチュンクエストシリーズ

□anotherフォーチュンクエスト番外編@出会い・レオン目線
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レオン登場
《レオン目線》

声が聞こえた。
こんな山火事の起こった森には似合わない、少女の声。
ここらに集落があったと噂されるエルフか?
俺は、その声の方向へ走り出した。
しばらくして、キャアキャアという悲鳴が聞こえる。
見ると、確かにエルフもいるが普通の少女もいた。
その少女はエルフの子供を守りながら必死にナイフを振り回していた。
効果があるとは言い難いが。
それでも、自身よりもエルフの子供を優先するその姿は、今まで見たものの中で何より美しいと思えるものだった。

「少々濡れるが、我慢してくれ」

そう言って俺は、水の魔法を唱えスライムを流し沈黙させる。
沈黙したところで、少女はエルフの子供の無事を確認しギューっと抱きしめた。
とりあえず、ここにいてはまた、襲われるかもしれない。
スライムは火に弱いが水の魔法を使ったからだ。
とりあえず、少女たちと安全だと思われる、小川近くまで走った。
俺にとってはなんてないことだが、少女にはきつかったようで、小川に着いた途端、小川に手をつっこみ顔やら手を洗う。
そして、エルフの子も呼び手や顔をキレイにしてやっている。
自身のとてつもなくキワドイ格好に気づいてないのか・・・。
どうやら、少女は自分のことより他を優先するようだ。
見てられなくなった俺は、少女に声をかける。

「なぁ、ところでアンタ着替えは持ってるか?」

その声でこちらに振り向く少女。
・・・だから、アンタ無防備すぎだから。
言いたいことは胸にしまい、こちらを見たまま固まった少女に再度声をかける。

「その格好はまずいと思うんだがな」

そこで少女はやっと自分の格好に気がついたらしい。
エルフの子供を連れ、木の影に着替えにいく。
別にエルフの子供は気にしなくていいと思う。
少女が守ったおかげで、さほど服はボロボロではなかった。
問題だったのは少女。
胸元だの、スカートもスライムに溶かされていたから、足のかなりキワドイところまであらわになっていた。
いや、別にジロジロ見たわけじゃ・・・。
誰に言い訳してるのか自分でも分からぬまま、とりあえず少女たちの着替えが終わるまで辺りを警戒する。
それにしても・・・誰かを、何かを、美しいと思った、感じたのは初めてだな。
今まで、美しいだの可愛いだの言われる人間には会ってきた。
自分はそんなこと微塵も思わなかったが。
宝石の類も見たことはある。
価値あるものか、そうでないかの違いしか見なかったが。
なんだかな、俺はどこか欠落しているようだ。
だが、あの少女といれば自分は人間らしい感情を持てるかもしれない。
そんな、普段なら即否定するような考えが浮かぶ。
俺が確信するのは、着替えを終えた少女と再び話した時。
お礼を言う少女に、俺は普段なら口に出さない言葉をかけた。
『イイものも見られてたしな?』
別に、女の裸など興味はない。
19年生きていて、あまりの女っ気のなさに弟どもが心配していたぐらいだ。
だが、なぜかこう言って少女の反応が見たくなった。
誰かの反応が見たいなんて、初めて思った。
少女はこちらの予想通りに、顔を真っ赤に染める。
だが、こちらを非難するようなことは言わない。
その様子が、可愛くてたまらなかった。
可愛い、美しい、素直、頼りなさげなのに、いざとなったら凛としている。
からかうと目を見開き、クルクルと回す。
表情もコロコロと変わる。
ずっと、見ていたくなる。

ずっと側で。
そのすべてを見たくなる。

これは、欲か?
なら、それに従おうじゃないか。
初めて『欲しい』と思うもの。
俺はファイターだが、盗賊(シーフ)でもある。
『お宝』を逃すわけにはいかない。
部屋を用意し、俺の家に住まわせよう。
あの様子だと、服も必要だな。
飾り立てるのも、なかなか楽しそうだ。
俺は、あれこれと計画する頭と初めて感じる心地よい鼓動を止められなかった。

まぁ、翌日出会うキットンが、この先、俺の抑止力になることは、まだ誰も知らない。




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