anotherフォーチュンクエストシリーズ

□anotherフォーチュンクエスト番外編C海水浴
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海水浴

うわぁ〜!海だ〜!!
眼前に広がる海に、私は目をキラキラさせる。
ここは、エベリンから離れたストーンリバーという港町。
私たちはここへ海水浴をしにきた。
話の発端はここから、

「なぁ、暑いから海に行かないか?」

暑さに弱いレオンが、扇でパタパタと顔に風を送りながら言う。

「海?」

「ああ、こう暑いと頭も働かない。休みをとったから、海に行って涼をとらないか?」

「いいですねぇ、わたしも海を見てみたいです」

「オレも」

「うみってなんらぁ?」

「ん?ルーミィは海を知らないのか?」

「しゃーない!」

「海っていうのは、そうだな・・・湖より大きな水たまりだ。水は塩からいけどな」

「かりゃいんかぁ?」

「ああ、けっこう辛い」

「レオン、水たまりって・・・」

「他に適切な言葉があるか?」

そう言われ、私とキットンとノルは、うーん、となってしまう。

「わーい!ルーミィうみいくおぅ!」

「お前らはどうする?」

ルーミィを高い高いしながらレオンが聞いてくる。
私たち3人は思いっきり頷いた。
だって、海だよ!海!
物語でしか読んだことのない、海に私の胸は高鳴った。
そうして、私たちは乗合馬車に乗り港町ストーンリバーへと向かったのだった。

「感動中、悪いんだが・・・水着を買いに行くぞ」

宿に荷物を置き、海を見て感動にひたっていると、レオンに話しかけられた。

「あっ、ごめん!初めてみるから・・・」

「別にかまわないが・・・見るより泳いだほうが涼しいぞ?」

そのレオンの言葉に、私は固まる。

「パステル?」

「あー、泳ぐの?」

「海水浴にきて、泳がないやつがどこにいる?」

「そうだよね・・・」

ど、どうしよう〜!
私泳げないのに!

「ふーん、パステルは泳げないのか」

ドキッ!!

「冒険者が泳げないとなると、色々困るな。よし!泳げるように特訓してやる」

ウワァー、やっぱり?!
というか、レオンはなんで楽しそうなの?

「あの、レオン」

そこへキットンが話しかけてくる。

「なんだ?キットン。俺はパステルに泳ぎを教えるだけだぞ?」

「それなんですがねぇ・・・」

「?」

そこでキットンはノルに視線を向け、ノルもうんうん頷いてる。
どうしたんだろう?

「わたしたちにも、泳ぎを教えて下さい」

「わたしたち?」

「はい。わたしとノルとルーミィです」

「泳げないのか?」

「うん」

と、頷いたのはノル。
レオンはここで面白くないと言いたげな顔をする。

「冒険者が泳げないのは困る、でしたよね?」

そのキットンの言葉が決定打となり、私たちはレオンによる泳ぎの特訓をすることになった。

砂浜は人も多く、当たり前だけど、みんな水着姿。
そんななか、注目を浴びてるのは、私たちのパーティ・・・というより、レオン。
まあ、これも当たり前と言っちゃ当たり前なんだけど。
それにしても、やっぱりレオンってカッコイイなぁ。
普段の仕事時のスーツ姿はもちろん、普段着は胸もとをはだけた格好が多いけど水着になると露出度が違う。
筋骨隆々なんだけど、腰は細い。
水着は薄い茶色で地味なのに、存在感がハンパない。
ちなみに、キットンは緑の水着でノルは黒。
ルーミィは青のセーラー服っぽいビキニ。
私?私もなんとビキニ!
いや、私は嫌だって言ったんだよ!
でもレオンが、泳ぐ時は布面積が少ない方が良いって言って、強引にピンクのビキニに決めたの。
私はワンピースタイプが良かったのに。
でも、泳ぐ時以外はパーカー着てろって言われて、今はパーカーを着ている。
レオンは色めく女の人たちは何のその。
海の近場にパラソルをたて、ノルと一緒にシートを広げる。
キットンは砂浜に流れついてる海藻に夢中。
私とルーミィは、そのシートの上に荷物を置く。
ああ、視線が突き刺さる。
そこへ、

「ねぇ〜、わたしたちと泳がない?」

と甘ったるい声。
見ると黒の大胆なビキニのスタイル抜群の美人のおねえさん方がレオンに迫っている。
レオンは不機嫌そう。

「連れがいる」

レオンはそっけなく言うが、おねえさん方はこの海1番のイイ男のレオンを諦めきれない様子。

「妹さんたちは、そこの人たちに任せればいいじゃない」

妹たち?!私とルーミィ、レオンの妹だと思われてるの?
話を振られたノルと、やっとこっちにきたキットンも、この場の状況に困り顔。

「しつこい。断られてるのが分からないほど暑さにやられてるなら、病院に行け」

レオンのその冷たい言葉と態度に、おねえさん方は悔しげな顔をして去っていく。
レオン、怖い・・・。

「まったく・・・ん?パステル、どうした?」

こっちを向いて微笑んだ顔は、いつもの優しいレオンでほっとする。
本当、レオンって変わってるなぁ。
普通、あんなキレイな人たちに声かけられたら、男の人って喜ぶんじゃないの?
それなのにレオンは、いかにもウザいって感じの対応。
エベリンの街でもそうだけど。

「パステル・・・その微妙な顔はなんなんだ?」

「なんでもない」

「なんでもないって、顔じゃないんだが・・・まぁ、とりあえず泳ぎの特訓といくか」

レオンは納得してないような顔をしていたが、聞いても無駄だと判断したのかルーミィを連れて海へと入る。
それに続く、私・キットン・ノル。
海は照りつける太陽のせいか、ほどよい冷たさ。
私たちはさっきの騒動を忘れ、海を楽しむことにした。



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