○ Brave sword ○

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***


 自然に出来た洞窟の中。
 時折、崩れた壁から差し込む光に照らしだされているが、洞窟の中の闇を晴らすほどではない。
 濃くよどんだような闇に目を向け、レイジスは敵の気配を探った。
 何度か敵の攻撃を受け、体のあちこちが痛むが、集中を妨げるほどではない。
 訓練と、鎧の力によって研ぎ澄まされた感覚が、近くに潜んでいるはずの敵意を感じ取る。

 気配は……右からくる!

 レイジスは銃を構え、敵が来る方向へ銃口を向けた。
 直後、闇に沈んだ横道から大量のコウモリが現れる。
 襲い掛かってくるコウモリの群れに向かって引き金を引く。
 耳障りな鳴き声を上げて落ちていくコウモリたち…その影から、大きな異形の影が飛び出してきた。
 周りを飛び交うコウモリを大きくし、無理やり歪めて人間の形に当てはめたような怪物――アンデット。

「!」

 ようやく現れた本命に銃を構えなおし、発砲する。
 だが、弾はソレを守るように群れるコウモリたちに当たってしまい、敵にダメージを与えられない。
 そんな敵をあざ笑うかのように、コウモリアンデットは翼の先、鋭い鉤爪をなぎ払うように振るった。
 いつもならば、あっさりと見切れるはずの攻撃。
 だが、一瞬、足が重く引きつった。

「ぐっ!」

 鉤爪は胸の装甲に当たったため、自分自身へのダメージはない。
 だが、思いの他強い力で弾き飛ばされ、よろめく。
 一瞬の隙を突き、怪物は翼を翻して洞窟の奥へと飛び去っていく。

「逃がさんっ!」

 体勢を整え、愛馬レッドに跨るレイジス。
 同時に背後から迫ってくる、別の蹄の音が耳に届いた。

「レイジスさん!」

 駆けつけた青い鎧の騎士ソードに、洞窟の奥を示す。

「ヤツは奥へ逃げた。追うぞ!」
「了解!」

 奥へ行けばいくほど、差し込む光は薄くなり、闇が多くなる。
 そんな中でもレッドとブルー、二頭の馬は足場を間違えることもなく、猛スピードで駆けて行く。
 魔術で強化・調整された馬は、高い知能を持っている。
 レイジスは敵の追跡を完全にレッドに任せると、自分は馬の首に体を預け、銃を構えた。
 闇の中でも集中すれば、鎧はクリアな視界を保つ。
 逃げ去ろうと、洞窟内を飛び去る敵の背中に狙いを定め、引き金を引いた。
 一瞬飛び散った火花が闇を照らす。
 耳障りな甲高い悲鳴が響き、怪物がバランスを崩し、壁にぶち当たりながら床に落下する。

「ぅえぇぇいっ!!」

 雄叫びを上げ、剣を構えたソードがブルーから飛び降りて斬りかかった。
 追撃を受け、床を転がりながら攻撃を避けるアンデット。
 当たらない攻撃に焦れたのか、ソードがすっと、左手を構えた。
 何もなかった手の中に、一枚のカードが現れる。
 それを剣の鍔に当てると、カードは光になって剣に吸収された。
 光は刃全体に広がり、輝く剣を構えて敵に突撃する。

 しかし。

「うあっ!」

 あっさりと攻撃ごと弾かれ、吹っ飛んでいくソード。

「ソード!」

 魔力のためが足らない。
 訓練でやったことが、初の実戦で頭から飛んでいるのか……。

 レイジスは馬から飛び降り、ソードに向かって攻撃をしようとしているアンデットに威嚇の発砲をした。
 ひるみ、ソードから離れたところで、まずは足を狙う。
 続いて、翼。
 身動きがとれずうずくまったスキに、左手に意識を集中させる。
 出現させた2枚のカードを、銃のグリップに付けられた宝石に触れさせた。

 カードが光に変化し、銃に吸い込まれる。
 光――魔力が充分に満たされたのを感じ、レイジスは引き金を引いた。
 凝縮された魔力が弾丸となり、アンデットの体に叩き込まれる。
 敵の体の中で、弾丸が弾ける。

――■■■■■!!!

 爆発に巻き込まれて崩れ落ちる洞窟の天井と共に、アンデットが断末の悲鳴を上げて倒れた。



 
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