両手いっぱいの花束を君に(1話〜30話)

□両手いっぱいの花束を君に十七話
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記憶が幼年時代に退行しても、ルルーシュはやはりルルーシュ
だ。
ほんの少しの混乱はもちろんあったようだが、それよりも、ル ルーシュはまず ユーフェミアのことを気づかった。
自分のことよりも相手のこと。
ルルーシュはそうやっていつも自分のことを置いてきぼりにす る。

聡いルルーシュに隠し事はできない。
なぜルルーシュが階段から落ちるようなはめになったのか、そ の経緯をかいつまんで説明していた。
何かの事情で、ユーフェミアと自分が喧嘩して、その後事故が 起きたと聞いて、自分が傍にいれば、ユーフェミアが気を使う だろうと考えたようだった。

『僕は…スザクと一緒にいた方がいい、と想います』

ためらいがちな視線をこちらに投げながら、ルルーシュは告げ た。
ミレイも、ユーフェミアも、そしてスザク自身も、今の状況で 自分がルルーシュと 一緒にいていいのか迷った。

10歳の頃のルルーシュは、自分が女の子であることをスザクに 隠していた。
だが、17歳のルルーシュはスザクにそのことを告白している。
また、10歳の彼女の持つ記憶の中の世界と現在の世界の違いな ど、考えるべきことは色々ある。
やはり今は、ユーフェミアが傍にいた方が…。

だが、さらに続いたルルーシュの言葉に、スザクは心を決めた のだった。
そう、ルルーシュは言った。

『10歳じゃなくても、スザクは僕の親友だから…』と。

無条件に向けられる信頼は嬉しくて、けれど少しだけ胸が痛か った。

****

「…ここが、スザクと僕の部屋?」
「そうだよ」

まだふらつくルルーシュの身体を支えながら、スザクはドアを 閉めた。
そして、「あっちが君のベッドだよ」とルルーシュの使ってい るベッドを指し示した。
ルルーシュは小さく頷き、ゆっくり歩み寄るとベッドに腰を下 ろした。

「…なんか、ちょっと変な感じだ。こんなふうに、スザクと寮 生活をしているなんて。だって、僕とスザクは同じ学校にだっ て通っていないのに」
「そう、だね。10歳の時は…そうだったね」

形のいい唇が紡ぐのは、「今」ではない頃の二人のこと。
確かに、それはスザクも通ってきたことのはずなのに、けれど それはスザクにとっての「現在」ではない。
お互いの時間を共有していない。
離れていた7年の時に逆戻りしたかのようで、少し寂しくなる 。

「なあ…スザク」

そんなスザクの様子に気付いたのか、ルルーシュがためらいが ちに呼びかけてくる。
ルルーシュは自分の胸を何かを確かめるかのように手でさすり ながら、小さく深呼吸した。
顔をうつむかせたまま、

「…今のスザクは、僕のこと…知ってるのか?」

『僕』のこと。
それはおそらく。

「…ルルーシュが、本当は…女の子だってこと、だね?」
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