両手いっぱいの花束を君に(1話〜30話)

□両手いっぱいの花束を君に十九話
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「あれは、ルルーシュが5歳の時でした」

ルルーシュのこれからに必要な話なのだと押し切られ、スザクはユフィと共にいた。
部屋にルルーシュを一人残すことは気掛かりだが、ユフィが真剣なことは見てとれたからついてきたのだ。

ルルーシュが5歳。
スザクと出会う4年前のことだ。

「ルルーシュのお母さま、マリアンヌ様がお亡くなりになっていることは、ご存知ですね?」
「はい、知っています」

戦乱に乗じて誰かに殺されたのだと言っていた。
その時のルルーシュの気持ちを思うと、胸が痛んだ。
真摯に聞き入るスザクの様子に、ユフィは何かを決心したかのようにきっぱりとした口調で続けた。

「…私は、マリアンヌ様の死は兄のシュナイゼルに関係があるのではないかと思っています」
「…あなたの兄君、ですか?」
「私と、ルルーシュ両方にとっての、ですわ。…もっとも、お母さまは違いますが」

意外な言葉にスザクは息を飲む。
母違いの兄妹たち。
二人がどれほど複雑な状況で過ごしてきたのか、本当の意味で、スザクには理解できないのかもしれない。
スザクは訊ねた。

「それは…皇帝がルルーシュを後継に考えて男子として育てたということに、関係しているのでしょうか」

つまりは、後継争いの邪魔になるとして…?
いくら父の寵愛を受けていても、母という直接の後ろ楯がなくなったルルーシュの身に危険がないとは言い切れない。
だから、だろうか?
ユフィがルルーシュをここに送ったというのは。
けれど、ユフィから返ってきたのは、全く予想もしていない言葉だった。

「シュナイゼル兄さまは…ルルーシュを『一人の女』として愛しているのです。5歳になったルルーシュが、初めてあの方に会った時から」
「…兄君が…ルルーシュを?」

ルルーシュとは10歳違いの兄、シュナイゼルは10から15の年になるまで、ブリタニア国外に遊学に出ていた。
帰国した彼は子供ながらに、愛らしく気高いルルーシュに一目で恋に落ちてしまったのだと言う。

「マリアンヌ様は、お兄様の気持ちに気付き、少しでもルルーシュを遠ざけようとなさった。
ルルーシュとナナリーを一年間日本に送られたのも、そのためだったのですよ。マリアンヌ様は、あなたのお父上、枢木ゲンブ様とは知己の仲でいらっしゃったから、安心して預けられると考えたのでしょう」

父とマリアンヌが知己の仲?
スザクには、全くの初耳だった。
いや…そうだっただろうか。

「…マリアンヌ様は、庶民の出でいらっしゃいましたね?」
「ええ、そうですわ」

スザクは自らの記憶を懸命に呼び起こす。
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