両手いっぱいの花束を君に(1話〜30話)

□両手いっぱいの花束を君に二十話
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ミレイが提案したパーティは、三日後に開かれることになっていた。
生徒会主催だから、役員は全員出席だと言われたが、スザクは正直乗り気ではなかった。
裏方的な手伝いをするのはもちろん構わない。
だが、スザクはもともとそういう華やかな場面があまり得意ではなかった。

子供の頃は、日本国首相の息子ということで、そういう場面に出て行かなくてはならないことも多かったけれど、たいていの場合、こっそりと抜け出したものだ。
最初は一人で。
そして、ルルーシュが側にいた時は、二人で。
パーティの前の日に、隠れがにしていた土蔵の中に二人分のお菓子を隠しておいて、おしゃべりしたり、トランプをしたりして遊んだ。
一度せがまれて、チェスをやったことがあったけれど、ルールがよく分からないスザクではルルーシュの相手にはならず、ルルーシュは白い頬を膨らませていた。

「スザク、意外とうまいな」
「え?」

ふと、隣に座るルルーシュが感心したように言う。
今は生徒会室で、パーティの飾り付け用の花を作っていたのだ。
紙で作る花。
生花は高いから、こういうところで経費削減しなくちゃね、というのがミレイの言い分だ。
無心に手だけを動かしていたからか、スザクの手元には大量の花が出来上がっていた。

ちらりとルルーシュの方を見る。
ルルーシュの手元 には、スザクの倍近い花があった。

「君の方がうまいんじゃないの? すごい量じゃないか」

スザクの言葉に、ルルーシュはふふと笑う。

「僕が上手いのは当たり前だろ。見かけによらず、スザクがうまいって褒めてあげたんだ」
「…ルルーシュ、君ね」

この数日、ルルーシュはやけにはしゃいでいた。
ルルーシュも、パーティはあまり好きじゃないと話していたのに、「今の」ルルーシュは少し違うようだった。
気晴らしがしたいのだろうか。

「ねえルルーシュ」
「何?」

大丈夫なのか、と訊こうとして、やめる。
何でもない、と頭を振ると、ルルーシュが手をのばし、頬を軽く摘んできた。

「…やっぱり、今のスザクは大人かも」
「どういう意味?」

ルルーシュはさらに頬をつねりながら、

「だって、頬の肉が薄くなったもの。僕の知ってるスザクは、もっとぷくっとした頬をしてるから」
「そ、そうだったかな?」

そういえば、子供の時、ルルーシュはよくふざけてスザクの頬をつねってきた。
柔らかくて気持ちいい、という理由からだったが、スザクはルルーシュの方がずっと手触りがいいと思っていた。
ルルーシュにつられ、スザクは手をのばし、ルルーシュの頬に触れた。
柔らかく、弾力のある肌。
真っ白な肌は、滑らかですべすべしている。

「…スザクの手、かさかさしてる」
「あ、…ごめんっ」

軍務についているスザクの手は、訓練で出来た肉刺や傷で、硬くざらざらしている。
思わず引こうとした手は、けれど、ルルーシュによって遮られる。

「ルルーシュ?」

ルルーシュはスザクの手のひらに自分のそれを重ねあわせた。
上背はあるルルーシュだが、全体的に骨格は華奢だ。
手のひらの大きさも、スザクよりはずっと小さい。

「スザクは…17歳の僕とこんなふうに手をつないだことはある?」
「えっ…なんで急に…」
「さあ、なんでかな?」

質問に答えることもなく、ひどく要領を得ない。
アメジストの美しい双眸がちらりとこちらに向けられた。

「疲れたから今日はもう帰ろう。こんなにいっぱい作ったんだから、ミレイだって許してくれるよ」
「う、うん…」

わけのわからないままに、スザクは頷いたのだった。
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