本編寄りスザルル小説(一期)

□この道が二人を分つまで
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***

コンコン、と窓を叩く音がする。
カーテンをひくと、どこか思い詰めた表情のスザクが立っていた。

「…夜遅くにごめん」
「いいから入れよ。…風邪ひくぞ」

いつもははつらつとしている顔に、覇気がない。
よほど疲れているのか、それとも…。

「ルル…」

部屋にあがるなり、スザクはルルーシュを抱き寄せた。
常とは想像もつかないほどの性急さで、キスを求めてくる。
勢いに押されながらも、ルルーシュはキスを拒まなかった。求められるがままにあた え、自分からもスザクの熱を求める。
ようやく落ち着くと、スザクの耳元に唇を寄せ、囁く。

「…今日は、最後まで、しよう」

スザクが息を飲む。

「…いいの?」
「ああ…。俺が、したいんだ」

大切な幼なじみであり、恋人であるスザク。
そうなったのは、自然な流れだった。
子供の頃、二人が過ごした時間はとても短くて、けれど、それはまるで宝石のように キラキラと輝き続けている。
「本当は」と、スザクが軽い世間話のように切り出してきたのは、ゼロの仮面をアー サーにとられた事件の翌日だった。

―本当は…僕はルルのことがずっと好きだったんだ。その、…友達としてっていうよ りも、…恋人みたいな感じで。

顔を赤くして、ぽりぽりと頭をかきながら。

―でも、…こんなの気持ち悪いよね。おかしいよね。

分かっていた。
大切なものが増えれば増えるだけ、危険だということ。
ゼロとしても生きるつもりならば、大切なものは少ない方がいい。
秘密をかかえている分、切り捨てられないものが足かせになる。

それでも、つっぱねることは出来なかった。
ルルーシュも、まったく同じ気持ちを抱えていたから。

甘い言葉。手のぬくもり。優しいキス。
そんな些細なものが、ルルーシュを誰よりも幸せな人間にしてくれた。
それでも、まだ…最後の一線だけは越えてはいなかった。
怖くなかったと言ったら嘘になる。
心だけでなく、身体までもスザクのものになったら、そうなった時、自分がどうなっ てしまうのか想像もつかなかった。
抱えているもの。決して手放せないものがある。
もしも、スザクがそれ以上の存在になってしまったら。
だけど。

「…スザクが好きだから、してほしい」
「…僕、初めてだし、…それに…今日は余裕ないから、優しくできないかもしれない」
「いいよ、それでも」

抱えているもの。決して手放せないものがある。
だからこそ。
今、スザクが欲しかった。
これから先、どうなるか自分でも分からないから。
もしも。
この先。
スザクに別れを告げることになっても、決して後悔しないですむように。
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