スザルル新婚さん小説

□サンタクロースにくちづけを
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***

「…ルル、これって?」
「…招待状だって。コーネリア…姉様から」

夕べのことだ。
ルルーシュが眉間に皺を寄せながら、一通の封筒を差し出したのは。
かすかに香水の香る封筒。
それは、スザク宛のものだった。
もちろんルルーシュ宛のものもある。その日の朝、突然送られてきたのだとルルーシュ
は言った。

「…僕にも?」
「そう書いてあるだろっ」

思わず確認すると、つん、とそう返してくる。
相当に機嫌が悪い。

母一人子二人だったルルーシュ一家。
それが、母・マリアンヌの再婚により、四人家族になって。
両親が交通事故でなくなって、兄妹二人きりになって。
それ以外に親族はいないと信じていたルルーシュの元に、腹違いの姉、コーネリアが
訪ねてきたのは一年前のこと。

マリアンヌはとある人物の愛人で(といっても、相手にたいして気持ちはあったのだ
ろうけれど)、二人の子供をなしたところで、そのとある人物からは手切れ金すら貰
わずに自分から身をひいた。

そのとある人物―つまりルルーシュの父親である人物の正妻の子供がコーネリアだっ た。
彼女はどこからかルルーシュとナナリーの存在を聞き付け、会いにやってきた。
意志の強そうな双眸を優しく細め、彼女は二人をいとしそうに見つめた。

『今まですまなかった。私はお前たちの存在を知らなかったのだ。お前たちの母君の
葬儀に顔を出すことも出来ず本当に申し訳なかった』

本来なら、責められても文句は言えない。だが、コーネリアはルルーシュたちに罪は
ないと、いや、マリアンヌにさえ罪はないのだと言った。
いくらマリアンヌの方から身を引いたとはいえ、彼女の行方を探しもしなかった父親
こそが責められるべきだとコーネリアは言った。
そして、彼女はルルーシュたちに「一緒に暮らそう」とまで提案した。

彼女は既にギルバート・GP・ギルフォードなる人物に嫁いでおり、妹のユーフェミア
(ルルーシュたちには姉にあたる)と三人でシロカネの高級住宅地に居を構えている。
三人で住むには広すぎる豪邸。二人が住む場所は十分あるし、自分たちは家族なのだ から一緒に住むべきだと言った。
コーネリアにしても、ユーフェミアにしても、身内にたいしてはどこまでも情が深い 人間なのだ。

結局、ルルーシュはスザクと一緒に暮らすことになったし、ナナリーは寄宿制の学校
に進んだので、同居の話はよしとなったのだが…以来何かとルルーシュたちを気にか
けてくるコーネリアだった。
そして、それにコーネリアの弟、クロヴィスまでも加わり(彼も新たに出現した弟が
可愛くて仕方ないらしい)、ルルーシュはその好意をありがたいと思う反面ひどく戸
惑っているようだった。

そして、今年のクリスマス。
コーネリアが送ってきたのは、毎年開いているというプライベートクリスマスコンサー
トの招待状だった。

「…プライベートクリスマスコンサート。へえ、すごいね。コーネリア様が歌で、ユー
フェミア様がピアノ。観客は招待客だけなんだね。…どうして僕にまで…」
「そんなの…スザクは…俺の…その…恋人、なんだし、当然だろ」

コーネリアは豪気な人で、スザクとルルーシュの関係を認めてくれていた。
突然出てきたばかりの姉に認められる筋合いはないとルルーシュは怒ったが、スザク は嬉しかった。
だからこそ、プライベートな人間ばかりが集まるコンサートにスザクも招待してくれ たのだろう。
だが。

「でも、駄目だよ。僕、この日はバイトが入っているから。ルルはもう知ってるだろ
う?」

コンサートの日付けは12月24日。
まさしく、スイーツショップにとってはかき入れ時。
そんな時にバイトを休めるはずもないだろう、とルルーシュは了承してくれていた。

「そうだけど…。でも、俺、スザクに来てほしい。その日はナナリーも来られないっ
て言ってたし…俺一人だったら行かない」
「ルル…」

ルルーシュはそう宣言して、親指を噛んだ。
心の内に何かが渦巻いている時のルルーシュのクセだった。
スザクは「駄目だよ」とルルーシュの手を取る。
駄目だよ、ルルーシュ。駄目だ。
親指を噛むクセを注意したのではない。
スザクは精一杯の気持ちをこめて、ルルーシュを見つめた。
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