本編寄りスザルル小説(一期)

□この道が二人を分つまで
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*アニメ、11話以後のお話。ナリタの戦いの際に、ランスロットのパイロットがスザク
であるとルルーシュが気付いたという設定で書いています。
『今夜、部屋に行く』

スザクから短いメールが入ったのは、ちょうど午後の授業が終わった頃だった。
普段ならわざわざメールで連絡してくることはないのだが、今日は軍の仕事があるか らとスザクは学校を休んでいた。
愛想など全くないメールだが、一応は気を使ったのだろう。
授業中に着信しないように、と。

(…シーツーに、どこか別のところに隠れているように言わないと)

部屋に行ってもいい?ではなく、部屋に行くと断定口調。
スザクの口調が変わるのは、よほど追いつめられているということなのだろう。

追いつめられている、ということは。

(やはり…あれはスザクだったのか…)

ルルーシュは、つい数日前のことを思い出していた。

***

ナリタ連山での攻防戦。
あの時、ルルーシューゼロは、あの白い機体にあわやというところまで追いつめられ ていた。
さすがにもう駄目かとその時、シーツーが現れて…。

おそらくはギアスの力で。
彼女は、白い機体―ランスロットのパイロットをかく乱した。
ルルーシュにくれたものとは違う、力。

これ以上、借りを作ってたまるかと、華奢な肩を掴んだその時、ルルーシュの頭の中 に色々なものが流れ込んできた。
シーツーの過去…なのだろうか。
色々な場面が、実際にそこで自分が目にしているかのように。

そして。
確かにあの時。
ゆらゆらと揺れる陽炎の向こうに、スザクがいた。
ひどく怯えた顔で、ルルーシュの背後にあるものを見つめていた。

なぜスザクが。
信じたくはなかったけれど。
その答えはごく簡単だった。

ルルーシュは、シーツーを介して、ランスロットのパイロットと対峙していたのだ。
そう、ランスロットのパイロット。
スザクと。
信じられなかった。いや、信じたくなかった。
敵と認識している相手が、大切な幼なじみー今や、恋人のスザクだなんて。

『技術班だから危険なことはないんだ。僕は前線には出ないから』

そう言っていたくせに。
スザクは嘘をついていたのだ。
守秘義務により、仕方なかったのだろう。それは分かる。
けれど、そんなふうに、平気な顔で嘘をつける人間ではなかったのに。

スザクと戦う。
これから先も、ずっと。
それは、ルルーシュがゼロとして存在する限り避けられないことだ。
戦えるんだろうか。

「スザクと…」
「ーーお前の幼なじみは、あの機体のパイロットなのだろう? 敵となれあうのは危 険じゃないのか」

背後からかけられた声に、ルルーシュは肩を震わせた。

「何考えてるんだ、お前。隠れていろと…」
「屋上など誰もいやしないじゃないか。お前だって、一人きりになりたいからここに 来たのだろう?」

悪びれもせず、シーツーはそう告げる。
ルルーシュは小さく吐息した。

「で、どうなんだ? ルルーシュ」

再び問われ、ルルーシュはシーツーの瞳をまっすぐ見つめながら答える。

「なれあっているわけじゃない。それに…今となったら、都合がいいじゃないか。あ いつから…うまく情報を引き出せば…」
「出来るのか、お前に」

間髪入れずに返されて、ルルーシュは言葉につまった。
本心ではなかった。
都合がいいはずなどないのだ。
あの時見たことが嘘であれば、ただの幻であれば、どんなによかっただろう。
どんなにかそう願ったことだろう。

「ーーお前には、関係ない」
「関係なくはないな。お前は私の願いを叶えてくれると約束したのだから。お前が破 滅したら、私は損をしてしまうのだから」
「…損はさせないさ」

分かっている。
自分がなすべきことなど。痛いほどに。
ルルーシュは心地いい風を頬に感じながら、階下に広がる木々の緑をじっと見つめた。
まるで、スザクの瞳のような、緑を。
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