本編寄りスザルル小説(一期)

□CRESCEND 前編
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その日、アッシュフォード学園高等部生徒会は、いつにもまし て騒がしかった。
きっかけは、シャーリーが持ち込んだティーン雑誌の占いコー ナーである。
ふと、シャーリーは「スザクの誕生日はいつ?」と訊いたこと が発端となった。


***

「明日が誕生日だなんて! どうしてもっと早く言わなかった のよ〜!」とは、お祭り好きのミレイ。
「そうだぞ、水臭いぞ」とは、クラスメイトでもある、気のい いリヴァル。
「パーティの準備今から間に合うかしら?」と慌てているのは シャーリーだ。

ちなみに、カレンとニーナは不在。
今日は用事があって生徒会には出られないとのこと。

三人にじりじりと詰め寄られ、スザクは嬉しいような困ったよ うな複雑な表情を浮かべた。

(誕生日くらいで…こんなに騒がれても…)

生徒会の人間たちがかなりお祭り好きなのは知っていたけれど 、まさかここまでとは。
気にかけてくれるのは嬉しい。
だが、子供の頃から、皆が体験するようないわゆる「お誕生日 会」のようなものはやったことがなかったし、14でブリタニア 軍に入隊したスザクには、そんな日常は無縁のものだったから 。

だから…嬉しい反面、何となく慣れない。

(あ、そうか…一度だけ)

そうだ。
たった一度だけ。
少し遅い誕生日パーティをしてもらったことがある。
ケーキなんてなくて、豪華な食事もなかったけれど、あたたか い、優しい想い出。

(ルルーシュ…は僕の誕生日、覚えててくれてるのかな)

ルルーシュ。
心の中で紡ぐ、その名前。
誰よりも大切な人の名前。

今日はまだ…生徒会にきていない。
このところ、学校もさぼりがちで(そう、「休み」じゃない。 「サボり」だ)、あまり顔を合わせていない。

この学校で再会した時は、ずっと一緒にいられるのだと単純に 嬉しかった。
それなのに、最近の自分たちはすれ違いばかりだ。

スザクは軍務のせいでやはり休むことも多いし、けれど、頑張 ってきてみればルルーシュがいなかったりで。

(…遊びに行けば行ったで、僕とナナリーを二人きりにしてど こかに行っちゃうし)

ルルーシュの妹・ナナリー。
彼女のことは可愛いし、とても大切に思っている。
自分の妹のように。

けれど、それとこれとは話が違う。
スザクは「ルルーシュ」と一緒にいたいのに。
それなのに、ルルーシュはあえて自分と距離をとろうとする。

(…もしかして…あのせい、なのかな…)

心当たりは…一つある。
けれど、そのせいなのか確かめる勇気がスザクにはなかった。

「…って、きいてんの? スザク!」

目の前ににょきっと現れたのは、ミレイの顔だった。

「うわっ」
「何よ、まるで人のことお化けみたいに」

びっくりして声をあげると、失礼ねと言いながらミレイがスザ クの額を指でぴんと弾いた。
弾かれたところをさすりながら、「何の話ですか」と訊いてみ る。

「あなたのバースデイパーティの話よ! その日は生徒会の仕 事はお休みして街に出るか…それとも、ここでパーティするか どっちがいいかって話」
「ああ…」

思わず気のない返事を返すと、ミレイが今度は頬をつねった。
痛い、と抗議すると、ミレイは「だらしないわよね、ルルーシ ュ」と背後を振り返る。
知らない間に、ルルーシュがきていた。

「あ、ルルー…」
「こらっ、すぐそっちに逃げないっ」

やっと話が出来る…
そう思ってルルーシュの方に近付こうとするが、ミレイと…そ してほぼミレイの手下と化しているリヴァルに止められた。
二人掛かりできても、軍人として訓練を受けているスザクには かなうはずがないのだが、だからこそスザクは本気は出さない 。

「ちょ、ちょっと…はなっ…」

二人に押さえつけられじたばたとするスザクを、ルルーシュは 軽い一瞥を投げただけで、すぐに隣にいるシャーリーと談笑を 始めた。
シャーリーはうっすらと頬を染めている。
こちらから見れば、丸分かりだが…きっとルルーシュは気付い ていないんだろう。
シャーリーが胸をときめかせていることなんて。

(…どうして…)

知らないのだ。
そんな二人を見て、スザクがかすかな胸の痛みを覚えているこ とも。
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