両手いっぱいの花束を君に(1話〜30話)

□両手いっぱいの花を君に第一話
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「…501号室。ここか」

枢木スザクは、これから自分と、そしてまだ見ぬルームメイトの住居となる部屋のドアを軽くノックした。相手はまだ来ていないらしい。
一体どんな子がくるんだろう。仲良くできるといいけど。
スザクは多少の期待と不安を抱きつつ、部屋に脚を踏み入れた。
部屋は二人部屋。
広さはそれなりで、左右対象に、ベッドと机、本棚が配置されている。
質素なデザインだが使いやすそうだ。
バスとトイレはもちろんルームメイトと共用だ。
南に面しているから、日当たりがとてもいい。

「どっちにするかは…やっぱり相手がきてから決めた方がいいよな」

スザクはとりあえず荷物を適当な場所に置き、窓を開けた。
落下防止のために鉄格子がはめられているが、窓が大きいので、外はよく見える。

澄み渡る、青い空。
心が洗われる。
最後までここに来ることを賛成はしてもらえなかったけれど、後悔はなかった。

「親不孝でごめん、父さん」

スザクは、空に向かって小さく呟いた。


******


スザクは今日から国立アッシュフォード学園に入学した。
ここは、音楽科、美術科、法学科、商学科、普通科の5つの学科を有するエリア11に おいて唯一のブリタニア帝国の国立学校である。
それぞれの学科からは数々の著名人が排出されており、名門中の名門と謳われている。
スザクは普通科に入学した。

エリア11。
かつては「日本」と呼ばれていたこの国は、現在では、ブリタニア帝国の属国となっ ている。
強大な兵力によって、ブリタニアに侵略されたのだ。
一時期は、ブリタニアの圧政がひどく、日本人―今ではイレブンと呼ばれているーは ブリタニア人からの差別と迫害に苦しめられた。
が、数年前、エリア11を統括する総督が変わったことにより、イレブンたちの状況は 一変した。
イレブンたちが追いやられていた「ゲットー」は整備され、最低の生活が保障された。
もともとブリタニア人の中にも、イレブンに対する差別はいけないと主張する主義者たちが存在し、彼等の運動の成果もあり、表向き差別は消えた。
もちろん問題はまだ山積みだが、それはいつか解決できることだとスザクは信じている。

(そう、そのためにここに入学したんだから)

イレブンー現在は名誉ブリタニア人となっているスザクがこの学園に入学したのには 理由があった。
ブリタニアの軍隊に入るためだった。
後ろ楯も何もないスザクが軍隊に入るためには、ブリタニア国の教育を受けている必 要があったからだ。
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