両手いっぱいの花束を君に(1話〜30話)

□両手いっぱいの花束を君に三話
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「普段はこれで胸を潰してるんだ。特注なんだけど…この上からTシャツをきちゃえ
ば、全然分からないだろ?」
「…あ、ああ…うん」

今まで秘密にしていて悪かったと再び謝罪した後、ルルーシュはなぜか鞄の中身を目
の前にぶちまけて、男装時に着用している下着(と呼んでいいんだろうか)の説明を
始めた。
ベストのような形のそれは、前をファスナーで開閉するように作られている。
布地は伸縮性のある特殊な布のようだ。
見たところ、ルルーシュの胸はものすごく豊かというわけではなさそうだが、あるべ
きものを無理矢理平らにするのは、漠然とだけれど、あまりよくないのだろうなと思っ
た。
苦しくはないのだろうか。痛くは…ないのだろうか。
身長は標準の女子よりはかなり高い方だろうけれど、骨格は華奢だし、全体的にかな
り細身だ。
大きめの上着でうまく隠しているとはいえ…。

(それにしても…体育とかも男子と一緒にやるつもりなのかな)

男子と一緒に、という言い方は、正しくはないのかもしれないが。
ルルーシュは男としてこの学園に入学しているわけだし。
記憶の中のルルーシュは、運動神経がものすごくひどいというわけではないにしろ、
あまり得意な方ではなかった。
あの頃はよく熱を出して寝込んだりもしていたし、今の痩身を見ても、男子について
いける体力はないんじゃないかと思う。
それに…よくよく考えてみれば、大問題がある。
スザクは慌てた。

「あ、あの…ルルーシュ? 体育、なんだけど…夏は水泳があるだろう? その時は
どうするつもりなんだい?」

普段はともかく、水泳はごまかしようがない。見学という手はあるが、それでは単位
がとれなくなってしまう。

「あ…うん、それどうしたらいいかな」
「ど、どうしようかって…考えてなかったのかい!?」

けろっとした様子で言うから、呆れてしまう。
だが、スザクの言葉に、「考えてなかったわけじゃない」とルルーシュは唇を尖らせ
た。

(昔とおんなじだ…)

実は女の子だったという衝撃の事実に始まり、些細ながらも刺激的な出来事の連続で
すっかり混乱していたけれど、昔と全く変わらないところを見つけて嬉しくなる。
昔もよくこういう顔をした。
ルルーシュは、スザクにはとことん甘えてくるのだが、その甘え方が素直じゃなかっ
た。
もとが意地っ張りだからだろうが、スザクはそういう部分も全てひっくるめてルルー
シュが好きだった。

「じゃあ、…一緒に考えようか?」
「だから…考えてなかったわけじゃないって…」
「でも、いい考えは浮かばなかったんだろう?」

指摘すると、今度は素直に「まあそうなんだけど…」と呟く。
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