両手いっぱいの花束を君に(1話〜30話)

□両手いっぱいの花束を君に四話
1ページ/3ページ

スザクの学園生活は、天国と地獄。まさに両極端といえた。
ルルーシュとは、寮の部屋ばかりでなく、クラスまでも一緒になった。

ルルーシュとずっと一緒にいられる…それはもちろん喜びではあったけれど、同時に
辛くもあった。
それは、抱いている感情があまりに違い過ぎるからだ。
子供の頃から抱いていた、ルルーシュへの思慕の念。
自覚したのは別れて少し経った頃だったけれど、スザクは自分の気持ちが友情とは少
し違うものなのだとはっきりと認識していた。そして、再会し、あらためて自分の気
持ちを確認した。
いや、してしまった。

けれど、ルルーシュは。
彼女にとって、自分はただの幼なじみでしかない。親友という位置にはいても、決し
てそれ以上にはなれない。
自分に向けられる微笑みも、差し伸べられる手も。
全ては、友情に基づいたもの。
けれど、それは仕方ないこと。そう納得したはず。
なのに、側にいられればいられるだけ、欲張りになる。
以前はただ、「一緒にいたい」それだけがスザクの望みだった。けれど、今は、もっ
と深いものを求めてしまう。

(いつかはルルーシュも…)

いつかは…ルルーシュは自分以外の誰かに愛情からその微笑みを、手を差し伸べるだ
ろう。
皇族にふさわしい誰かと。
姫である彼女を守っていける男と。
そして…それはきっとスザクではない。

そう考えると辛くなる。
胸が苦しくて、張り裂けそうになる。
今はまだおさえていられるけれど、無邪気にルルーシュが接してくるたびに…「僕の
気持ちも知らないで」と八つ当たりしてしまいそうになる。
そんな自分がひどく情けない。

(本当に情けない…こんなことばっかり考えてるなんて不毛だよな)

『全くだ。うだうだ考えるなんて男らしくない。そんなに好きならものにしてしまえ
ばいいじゃないか』

「え?」

耳元で、いや頭の中で、知らない女の声がした。
はじかれたように顔をあげてみるが、周りには誰もいない。
当然だ。ルルーシュと一緒にいるのが辛くて、ありもしない用事をでっちあげて、わ
ざわざ人気のない場所までやってきたのだから。

「また、幻聴…」

『最近の男は軟弱だな。本当に好きなら、身分など関係ないだろうに』
『相手が自分を友達以上に見てくれない、などと、所詮は逃げているだけだろう?』
『告白する勇気もないとはな』

その声はひどくはっきりと聞こえてくる。
姿も見えない。気配もしないのに、声だけがはっきりと、スザクを責め立てた。
それが、自分の心の声なのか、それ以外の何かなのかは分からない。
この間、寮の部屋でも聞こえたのと同じ、若い女の声。
スザクの心の真実を、残酷なまでに言い当てる。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ