両手いっぱいの花束を君に(1話〜30話)

□両手いっぱいの花束を君に五話
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ルルーシュは、目の前に高くつまれたプリントをホチキスで止めるだけの単純作業を
続けながら、深くため息をついた。
ため息の理由は二つ。あまりの単純作業に飽きたことが一つ、もう一つは、幼なじみ
のスザクのことだ。
最近、スザクの様子がおかしいのだ。
喧嘩したわけでもないのに、何となく、避けられているような気さえする。
スザクのことなら何でも分かると思っていたのに…。
何かを悩んでいるように見えるのだけれど、その悩みを分かってやれないことが辛い。
いや、それよりも、スザクはどうして自分に打ち明けてくれないんだろう…。

今は、放課後。生徒会業務の真っ最中である。
問題のスザクの姿は見えない。
他の生徒会役員のシャーリーとニーナと一緒に外にお使いにいかされているのだ。
そのため、部屋には、ルルーシュの他には、会長のミレイと同じく役員のリヴァルの
二人しかない。
ミレイは、「スザク」と「ルル」という二つ名を持つ黒猫と戯れている。彼女は「ル
ル」の呼び名の方が気に入っているようだ。
猫じゃらし片手に、肩までの巻き毛をゆらゆら揺らしながら、「ルルた〜ん」と猫と
の追いかけっこに興じている。
どうやら、仕事に混ざる気はないらしい。
リヴァルはルルーシュに耳打ちする。

「なあ…疲れないか、この作業。適当にしといて、後でシャーリーたちにも手伝わせ
ようぜ」
「ああ…うん、…どっちでも」

だが、じっとしていれば、スザクのことばかり気になってしまうので、正直言えば何
かすることがあった方がありがたい。
リヴァルの言葉に適当に返しつつ、ルルーシュの手は一向に止まることはない。

「ちょっと、君ね…。言ってることとやってることが違うんだけど」

即座にリヴァルから突っ込みが入る。
うるさいな、ほっといてくれればいいのに。
さぼるなら、一人でさぼれ! 
心の中でそんな悪態をつきながら、ルルーシュは唇を尖らせた。
その様子を見て、リヴァルは苦笑し、

「なんか今日ご機嫌斜めだな」
「…別に」

からかわれて、さらにルルーシュは不機嫌をつのらせる。
真剣に悩んでいるのにちゃかされるのは気分がよくなかった。
いつも側にいるはずのスザクはいないし、ナナリーはナナリーでレポートがあるとか
で今日はここに来られないようだし。
何だかつまらない。

「…リヴァル、ちょっと訊いてもいいかな」
「ん〜、何? お喋りなら大歓迎だけど〜」

あまり真剣に聞く気のないこいつに話しても何か意味はあるのだろうか、とも思う。
だが、考えても分からないのだから、第三者の意見をきくしかない。

「最近、スザクの様子がおかしいんだけど…お前、なんか知ってる?」
「スザクの? いや。っていうか、スザクのことだったら、ルルーシュの方がよっぽ
ど知ってんじゃん。同室なんだし」
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