両手いっぱいの花束を君に(1話〜30話)

□両手いっぱいの花束を君に六話
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思わず怒鳴ってしまった後で、ルルーシュは自己嫌悪に陥った。
スザクが寂しそうな顔をしていたからだ。

(俺…バカみたいだ。スザクに八つ当たりしたりして…)

スザクが悪くないのは、ルルーシュにも分かっていた。
リヴァルの話はちょっとショックだったけれど、それが「普通」のことなら、スザク
の反応はきっと仕方のないことだったのだ。
性別を偽っている時点で普通じゃない自分。
スザクはそんなルルーシュをちゃんと受け止めてくれたのに。
それなのに、子供みたいにかんしゃくを起こしたりして、最低だ。

「…ルル? 大丈夫かい?」

スザクがそっと手をのばしてきた。
指先がかすかに震えているような気がした。
きっと、ルルーシュがまだ怒っているんじゃないかと心配しているんだろう。

(スザクは悪くないのに…。スザクは俺のこと怒っていいのに)

一方的に怒鳴りつけられて、それでもスザクは怒りもせず、ルルーシュのことを気づ
かってくれる。
優しいスザク。
こんなふうに…他の誰かにも、スザクは優しくするんだろうか。
例えば…恋人に。
スザクの恋人。どんな人なんだろう。
きっと優しくて、可愛くて。スザクのことを一番に考えてあげられる人だ。
ルルーシュみたいに、短気で我侭で、どうしようもない意地っ張りなんかじゃなくて
…。

(痛い…)

ちくん、と胸が痛んだ。
まるで、針でさされたみたいに、ちくちくする。
こんな痛み、初めてだ。
耐えられなくて、ルルーシュはその場にへたり込む。

「ルルーシュ!?」「どうしたの、ルルちゃん!?」

その場にいる皆が心配そうに声をかけた。
スザクの声は聞こえない…。

(やっぱり…俺のことなんて…)

意地ばかり張っているから、呆れられてしまったのかも。
さらに胸がずきずきした、その時。
ふわり、と身体が宙に浮いた。

「会長さん、僕、ルルを保健室に連れて行きます!」

ふわりと鼻をくすぐる爽やかな香り。
スザクの匂い。

「…スザク?」
「大丈夫だよ、ルル。すぐ保健室に連れていってあげるから。少しだけ辛抱して」

すぐ目の前にある、スザクの優しそうな顔。
ルルーシュの身体は、宙に浮いたのではなくて、スザクに横抱きにされていたのだ。
一瞬、怖くなって、ルルーシュはスザクの首にぎゅっとしがみついた。
逞しい腕は動じることなく、痩身をしっかりと支えた。
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