短編 下書き
□年明けの男に気をつけろ!
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夜。
真っ黒な暗闇を照らす美しい月が、俺達二人の影を作り出す。
「11時50分か…」
「どうしたんだ?零兎」
俺がボソッと呟くと、隣りにいる俺の恋人の元親が顔を覗き込んでくる。
相変わらず、可愛い顔しやがって…
「いや、もうすぐ年が明けるなと思ってな」
「へー、零兎って、そんなの気にしない方かと思ってたぜ…、」
元親は頬をポリポリと掻きながら言う。
「馬鹿、俺だってこの一年、どうだったか振り返るさ」
「だよな〜、いろんな事があったよな」
二人共、グラスに入っている酒を飲みながらしみじみ言う。
元親は全部飲み干したのか、新しく酒の蓋を開けている。
「そういえばさ、告白したのってお前からだったよな」
「なっ!いきなり何言ってんだよ、零兎!!」
元親は顔を真っ赤にして、慌てて俺を見る。
「いやな、あん時のお前はすげぇ可愛かったと思ってな」
「なんだよっ!しょうがねぇだろ!!あん時は緊張してたんだから!」
「緊張して、しょっぱなから『結婚してくれ!』って言うのも珍しいよな」
「わぁぁぁぁあああああああ!!!」
元親は赤かった顔を更に赤くし、俺の口を塞ごうと覆い被さってくる。
それを俺はよけようと、体を動かしたが、腕が床を滑ってそのまま元親と倒れてしまう。
「うおっ、…」
「…っ零兎…」
目を開けると、目の前には酔って目が潤んでいる元親の顔があり、俺の胸はドキリと跳ねる。
「元親…」
「んっ……」
顎を掴むと、俺の唇を元親の唇に押しつけ舌をヌルリと入れ込む。
元親の中を味わうように、舌を絡め自身の唾液を送り込むと、元親の口の端からはどちらのかは分からない唾液が伝う。
「んっ……ふぁ、五十嵐」
唇を離すと、元親の目はとろんとしており、またキスしたい衝動にかけられる。
「…なぁ、元親」
「ん?」
俺は元親の髪を撫でながら言う。
「いつか、本当にお前が言ったように結婚しような」
俺がそう言うと、元親は一瞬大きく目を開け、照れくさそうに笑って
「おうっ」
と、返事した。
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