短編
□LOVE city
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ここは新宿駅。
どこから聞こえてるのか分からないほど色々なところから聞こえてくる会話。
そんな中、掲示板の前でため息をつく美女が一人。
「はぁ。今日も依頼ゼロ、か。」
彼女の名前は槙村香。裏の世界の人間なら誰もが知っているシティーハンターのかたわれである。
「XYZ…。アタシが書きたいくらいよ。」
そんなことをブツブツ言いながら香は駅をでた。
今は12月。街はそこらじゅうがライトアップされ、クリスマスムードをたかめている。
しかしそれと平行して、12月は寒い季節。香の服の隙間を、凍えるような冷たい風が通り抜ける。
あまりの寒さに走りだそうとしたとき、すぐ近くの工事現場で、立てられている柱がぐらぐらと揺れているのが目に入った。その下には3歳くらいの女の子が歩いている。
「危ないっ!!」
香が女の子を抱き締めた直後、 ガランゴロンと柱が倒れた音がした。
幸いにも女の子は無傷ですんだ。香も倒れてきた柱のうちの9本はうまくよけられたが、1本だけはよけきれなかった。
「っつう〜!」
右足の足首に痛みを感じる。柱の音を聞いて工事現場の人や街で歩いていた人達が集まってくる。何人かで足にのっていた柱はどかされた。女の子の親も事態に気づき飛んできたので、香はホッと一息ついた。
女の子を親に渡し、痛みをこらえなんとか立とうとしたその時
―フワッ―
体がちゅうに浮かんだ。驚いて顔をあげると、そこにはシティーハンターのかたわれのリョウが自分をお姫様抱っこしていた。
香の顔に、思わず笑みがこぼれた。
「何にやけてんだよ。」
頭の上から声がきこえる。
「ふふっ。別にぃ。」
すっかり心が暖かくなった香は、リョウにトンッと頭をぶつけながら言った。
「…ありがと。」
二人の少し甘めな時間は、家につくまでつづくのでした〜。