殺楽

□風は想い人の香り after
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殺生丸と神楽は花畑にいた。

「あんた、よくここに来てくれたよな…。」

神楽は殺生丸の側から離れ、かつて最期を迎えたところまで歩く。

「…生き返るとわかっていたら来なかっただろう。」

殺生丸はその後を追うように歩いていく。

「ははっ、まぁそうだろうね。あ、この辺りじゃねーか…?」

神楽がしゃがみこむ。

「懐かしいな。ここで座り込んでたら、あんたがいきなり現れたんだっけ。」

神楽は殺生丸を見上げる。

「生きていた中で、あのときが一番幸せだったかもな。」

「…。」

「こうしてると、あの日に戻ったみたいじゃないか?」

「…くだらん。」

殺生丸は神楽に更に近付くと、花の上に押し倒す。

「…絶対押し倒すの好きだろ。」

「そうだな。おまえをこうやって見下ろすのは嫌いではない。」

「てめ…」

「それに、触れていた方が落ち着く。」

そう言って、神楽を包み込むように抱きしめる。

「…ったく。」

神楽も、少し照れながら抱きしめ返す。


…と、その時。

「はっ、寝てしまっていたのか!?ああっ、殺生丸さまがおらん!どこへ行ってしまわれたんじゃ!!」

邪見は涙を流しながらキョロキョロあたりを見渡す。

するとさほど離れてないところに、見覚えのある白尾が。

「殺生丸さま!!」

「…見つかったか。」

殺生丸は渋々と言った様子で起き上がる。

神楽は、置き去りにされた上に邪魔者扱いされてる邪見が少し可哀想に思えた。


「居眠りなどして申し訳…って、え!?こ、こやつは!!」

殺生丸が差し出してくれた手を掴んで神楽が起き上がる。

「よう。」

「神楽!おぬし死んだのではなかったのか!!」

「まぁ色々あって、生き返ったんだ。」

「い、生き返ったって…」

邪見は口をパクパクさせて驚いている。

と、そんな邪見をお構いなしに、殺生丸が口を開く。

「邪見、これからは神楽も連れていく。」

「なっ、こやつを旅に同行させると!?」

「何か文句があるか?」

「お忘れですか殺生丸さま!?こやつも一応奈落の分身だったのですよ!?」

「過去はどうであれ、今はただの女だ。」

「で、ですが殺生丸さま…」

「私の言うことが聞けないのか?」

殺生丸が睨みながら言う。

「ひいいい!!わ、わかりました!」

邪見は反論できるわけもなく、土下座しながら了解した。

「わかったら、暫くどこかへ行っていろ。」

「「え!?」」

これには、邪見だけでなく神楽までも変な声をあげる。

「邪見、きさま私の邪魔をする気か?」

「え…?」

邪見は先程の二人の体制を思い出し、何かを察した。

「あっ、そ、そういうことでしたか!これは大変失礼いたしました!!」

そう言って邪見は走って花畑から出ていく。

「ちょっ、邪見待てよ!ってか殺生丸、てめえ何考えてんだ!!」

嫌な予感がして邪見を呼び止めたが、邪見はあっという間に見えなくなった。


「これで邪魔者はいない。覚悟するんだな。」

殺生丸がにやりと笑う。

「いや、その笑顔こえーし!って何また押し倒してんだよ!!」

「神楽…」

いきなり色っぽい声になった殺生丸に、神楽がビクリと震える。

「私はおまえが欲しい…。」

真剣かつ熱い瞳を向けられ、神楽はもう動けない。

「そっ、その目は卑怯だ…。」

「今すぐおまえと1つになりたい…。」


殺生丸と神楽の熱い時間はつづく。
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