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□愛してるから
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どうしてコイツがここに…
「お前…何してるアル。」
その言葉の先に1人の青年が写る。高い塀の上に腰を下ろし、月を見上げコチラを見ようともしない。自分と同じくチャイナ服に身を包み、長く伸びた髪を後ろに編み込んでいる。
「何で…お前がここにいるアルか…。」
深夜になっても寝付けず、散歩がてら外の空気を吸いに出た。何かに導かれる用に入った路地。
薄暗くジメジメした空気の中。何かの気配を感じた。
すぐに誰かわかった。
「オイ。聞いてるアルか。答えるヨロシ。」
心臓が凄い勢いで鳴っている……
コイツ………ッ。
「神楽。お前こそなにしてんの?」
月の明かりでハッキリしてくるアイツの顔。
どす黒い血…
「お前…。」
アイツ自身の物ではない。
全体に染み付いた物は違う誰かの物…
「青い顔しちゃって。」
気がつけば目の前に奴はいた。
昔とは違う笑顔を向けられる。
「お前…殺したアルか」
「うん。気にくわない奴らでね。俺に刀を向けてきたから殺してあげたんだよ。」
楽しそうに笑うアイツ
「どうして…。」
なぜか涙が肌を伝った。
どうして彼はこんなにも変わってしまったのだろう。
どうし…
「だからお前は弱いんだよ。」
目を見開いた。
懐かしいこの温度。
この香り。
包み込まれるように抱きしめられた。
「本当弱いよ…お前。」
「兄…ちゃ…」
何も変わってない温かさ。
なのに
どうして
涙がでるのだろう。
「…してるよ。神楽」
「……へ?」
「次あった時はお前を殺すから。…だから」
止められないんだ
俺はお前を殺してしまう
だから
だからお前が
「強くなれ」
俺を殺して。
END