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□冷たい雪の温もり
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シトシトと朝から降り続いていた雨が、仕事帰りの人達が溢れる頃には白い景色に変わる。




「雪…」



空を見つめると呟いた。

せっかく積もりかけた雪も車や人々達によって汚れて溶けて無くなってしまう。



よくわからないケド。




何故か悲しくなる。



けして雪が嫌いな訳じゃない


だけど


自分も…簡単に変わって汚く消えてしまうのではないか。



自分の中に流れる血。
戦いの本能。




「雪…みたいにはなりたくないアル……。」




声が届いたのか、神様の嫌がらせか、小さな粒の雪の結晶が大きな真っ白い固まりになって落ちてきた。




「…………フン。」



積もる前に万屋屋に帰ろうと歩きだす。




サクサクサク





「オイチャイナ。」




傘を上げると憎たらしいアイツがいた。


栗色の薄い髪が雪のせいでキラキラ光って眩しい



「何だヨ。」



「こうも雪が降っちゃあ屯所に帰るまでにずぶ濡れになっちまうねィ。」



「あっそ。じゃあナ」



「じゃあ行きますかィ」



勝手に傘に入り込んでくる沖田。



「何ダヨ。」



「送って」



「はあ?ふざけた事ぬかしてんじゃ無いネ。」



傘の中に入った男を追い出すかのように足を早めた。




「雪ってお前みたいでさァ」




ドキリとすると同時に足を止める。




自分が思っていた事、言われたくない言葉。





「はぁ…?どこがダヨ。」




「雪何か嫌いでさァ。冷たいし、寒いし、雪なんて降る意味なんてあるのかねィ。」




沖田はそう言うと、空から降ってくる雪を手で捕まえるような仕草をしている。





「………それのどこがワタシみたいアル。」




「お前の肌みたいに真っ白だし。まぁ、嫌いって事でィ。」




「ワタシだってお前何か嫌いアル。」





雪が先ほどよりも降り注ぐ。
早く帰ってコタツにでも入ろうと考えた。





「でも。」





沖田は喋り続ける。




「雪何か嫌いだけど、雪が降ると何だか嬉しくなりまさァ。」






どう言う意味か分からない。



数秒考えてみた。





「それって、ワタシに逢ったら嬉しいって事アルカ…?」




ありえない事だけど聞いてみた。





「さあねィ。けど、今嬉しいかも」


帰ってきた言葉に顔が熱くなった。



「チャイナ」




再び傘の中に入って来たと思った時、



唇に感じる温もり。



沖田は神楽から傘を奪うと、ソレで隠すように顔を赤く染める少女にキスをした。




コイツなんて嫌いなハズなのに、抵抗する気にはなれなかった。






「お…お前何するアル。」


唇が離れると両手を唇にあてながら言った。






「いや、雪だから溶けちゃうかと思ってねィ。」




「………やっぱりお前は馬鹿アル。そんなんじゃワタシは溶けないネ。」





「じゃあもっとスゲェのしてやらァ。」



神楽の腰に手を回すと自分の方へと顔を近づける。



「やれるもんならやってみろヨ。」





「ま、まじでか。」




「酢昆布5箱で許してやるアル。」




「安くね?」





「じゃあ…8箱。」




沖田はふっと笑うと目の前の小さな少女を抱きしめた。





「お前可愛いすぎでさァ」



「……当たり前アル。」




沖田の隊服に顔をうずくめた。



赤い顔がバレないように






「俺チャイナが好きかも」




「かもってなんダヨ。」





「いや、好きでさァ。神楽。……………今日泊まってくかィ?」





「ちょ、調子にのるナ!!!」





悲しかった気持ちが、いつの間にか暖かくなる。









ってのも悪くないな






2人の気持ちは同じだった。






「沖田。」




「何でィ」








「濡れるからちゃんと傘に入るヨロシ!!!!!」









END

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