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□家出少女K
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「…で、お前何してんだよ」



ベッドの上、テレビの音と笑い声に重たい目を開けると何故かピンク頭がそこにいた



「あ、オハヨー!!テレビ見てるアル!!こいつらオモロいネッ!!!高杉も一緒に見るアルッ!!」


そう言う訳では無く何故自分の部屋の中に神楽がいるのか、ボーっとする頭をどうにか起こすと時計を見る



(…もう5時か)



朝方まで万斉達が来ていたため、起きて気が付くともう辺りは薄暗くなってきていた



「何でお前がここにいんのか聞いてんだよ。」



ベッドから足を下ろすと煙草に火を付け、テレビに夢中になっている神楽に吹きかける

するとクッションを抱きしめながら嫌そうな顔をした



「銀ちゃんと喧嘩したアル。もうあんな奴知らないネッ!!」


まだ制服姿のため、大方銀八と学校で何かあったのだろうと考えるが、かと言ってもここに来る意味がわからない、不法侵入の上勝手に冷蔵庫をあさった形跡にため息を漏らす



「だからって何で俺ん所来んだよ」



「今日ここに泊まるアル!!」


―ガタン!!


「…あ?」



思いもしなかった神楽の言葉にベッドからずり落ちてしまった



「だーかーらー!!帰りたくないネ!!今日泊めろヨ!!」


神楽はそんな高杉に構わず身を乗り出し言い寄ると制服を脱ぎ勝手にクローゼットの中にあった服を物色しはじめた



(……コイツに警戒心って物はねえのか。それに泊まりたいだァ?)


「……別にいいぜぇ?」

少し間があったものの、冷静に返事を返すと服を選んだのか、神楽は服引っ張りだしながら嬉しそうにコチラに向いた



「まぢでか!!やっぱりお前は分かる奴だと思ってたアルッ♪あ、これ借りるアル」



神楽が選んだ服は白い長袖Tシャツ
高杉には丁度いいが、神楽が着たら少し大きいらしくブカブカしている



(……ちっせぇ)



「勝手にしろ……その代わり何があっても知らねーぜ?泣くような事になっても誰も気づきはしねぇしなァ」


「?」



目を丸くさせる神楽の側に寄り、余った腕の裾を捲り上げると透き通る様な白い肌が見える
くわえた煙草の煙の間から覗く顔は高杉を見つめた


「…クク。どうする?」


「泣くって…もしかして………夕ご飯無いアルかっ;;!?それはヤバネ!!さっそく買い出し行くアルッ!!!!」


神楽に意味など通じる訳もなくがっしりと高杉の体に両手を回した
その行動に一瞬驚くがすぐに冷静を保つと神楽の額を小突く



「…面倒くせぇよ。冷蔵庫に食いもんあんだろ」


「もう全部食べたアル!!」



「……。」



確かに机の上にはゴミが散乱している
確認のため、しがみつく神楽をズルズル引きながら冷蔵庫を覗くと綺麗に空っぽだ



(…色気より食い気かよ)


唯一残っていたミネラルウォーターを開けると一口ほど飲み込んだ
やはり寝起きはどうも喉が乾く



「ネェー!!お腹空いたアルゥ!!!!!」



下から上目遣いでおねだりをする神楽に高杉は少し小鬱な気分になった



「…知らねーよ。俺はもっぺん寝る」



高杉はミネラルウォーターを冷蔵庫にしまいフィルター近くまで吸った煙草を灰皿に押し付けるとベッドに向かった



「ちょっ!!お前さっきまで寝てたダロッ!!だめアルゥ!!!」



「うるせなァ、1人で言って来い」



「こんな時間にこんな可愛い子がいたらさらわれるネッ!!」



「じゃあお前も寝ろ」



「ぬおっ!!!」



色気は無い物の、持ち上げた少女の余りの軽さに少し驚く


「クク…色気ねぇなァ?」



「うがぁああ!!うるさいネッ!!!下ろすヨロシ!!!…うわっ!!」



重力によって離された神楽はベッドの上に落ちた


「急に離す奴がどこにいるアルッ!!」



「どっちだよ、離せっつったのはソッチだろォ?」



そう言うと神楽の隣に横たわる



「あっ!!寝たらだめネッ!!高杉ぃぃ〜!!」


「…………。」


「本当に寝たアルかッ!?起きてヨ!!!」



ゆさゆさと高杉を揺さぶると面倒くさそうに瞼をあげた



「…うるせぇなァ、キスしたら連れてってやるよ。」



コイツにできる訳が無い。そう思い高杉は再び目を閉じた






だが予想は外れた。
怒りだすかと思った神楽の唇は確実に己の唇に触れてきた



「…」



「〜ぷはあっ!キスしたアルッ!!約束通り早く夕ご飯調達しに行くネッ!!」



何の恥じらいもなくキスをした神楽は何事もなかった様に呆然とする高杉にまたがる



「……お前何したかわかってんのかァ?」



「何ってキスダロ?難しい事じゃないネ」



いつもなら顔を近づけただけでも大暴れをするくせに食べ物の事となると何でもするのか
高杉は今までの事を思い返した



「クク……確かに簡単だ。そこまでして行きたいかァ?」



「だから行きたいって言ってるダロ!!何回言わせるアルか!!」



「……ちっ。仕方ねぇその代わりじゃじゃ馬ァ、今日は寝かさねーからなァ」



そう言うと起き上がり愛用のコートを神楽に被せせると自分も着替え始める



「きゃほー♪私ハンバーグ食べたいアルッ!!あとオムライスにエビフライ!!!」



神楽はピョンピョンと跳ね回りながらコートを羽織った



「餓鬼、スカート位履け。雪降ってんぜェ」



「まじでか!!!」


窓を見ると白い雪が降ってきていた


高まる気持ちを抑え、すぐにスカートを履くがコートに隠れて何も履いてない様だ


「チビ」



「お前に言われたく無いアル!!!それより早く早く!!」



着替え終わった高杉の背中を押しながら玄関に向い靴を急いで履いた。扉を開けると冷たい風が一気に2人の体を吹き抜けた

「……寒っ。」


ブルッと寒気が走り体を縮めながら高杉は煙草に火をつける



「んー!!気持ちいアルっ!!あ、そう言えば私お金無いネ」



「んな事言わなくても知ってるぜェ」


こんな冷える日に何でコイツはこんなに元気いれるんだ


そう思ったが、そんな神楽の姿を見ていると自然に口先が上がった



「本当にお前今日泊まんのかァ?」



「当たり前ネ!!家出したアル!!銀ちゃんが誤るまで絶対帰らないアル!!」



「クク…じゃあ今日から俺と暮らすかァ?」



「考えてやってもいいネ」



スーパーまでの道のり


白い地面には大きさ違いの足跡を残していった






END

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