short

□いつから
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「…好きアル。」




「あ?」




「この饅頭好きアル!!!ごっさ美味いネッ!!!」




そう言うと隣に座る少女は新しい饅頭を手に取る。


これで何個目だろうか。



「お前まだ食うのかよ。」


キセルを吸うと、ソレを幸せそうに頬張る少女に吹きかけてみる。




「ゲホッ!!おまっ!何するアルかぁ!!!それより、もう饅頭なくなりそうアル。おかわりヨロシ?。」



むせながらも食べる事を辞めようとしない。


その上まだ食いたりないと言うのか。




「もうねぇよ。」




コイツが此処に来るようになったのはいつからだろう。


初めて逢った時からあの深い海のような瞳が忘れられなかった。



いつのまにかコイツを自分の者にしたいと思い始めた。




「えー!!!!!!まだ足りないアルゥゥ!!!」









包帯男の膝に横たわってみる。





いつからワタシはコイツのもとに行くようになったのだろう。

銀ちゃんには言えない。


コイツは銀ちゃんの適。


なのに気がつくと足は



彼のもとに向かっている。



「お前の胃袋はどうなってんだよ。」



いつも優しく撫でてくれるこの大きな手。
馴れてしまったこの空気。

安心してしまう自分がいる。


だけど…






「………足りないアル。」


「なぁ。」



彼を見上げる。




「んっ………。」





唇に感じる温かい



優しい感触。





「これで満足かあ?」



アイツはワタシに微笑みかける。






「…に……苦いアル。」



ワタシにしか見せない笑顔で。





「ククク…。俺がまだ足りねーよ。」



そう言うと再び少女の唇に己の唇を落とす。




触れ合うたびに小さく跳ねるコイツ。






「まるで兎だな。」



「…ふぇ?」







捕まえた兎。








逃がすものか。






END
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