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□近づきたくて
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「多串くん!!!」
「オイマヨラー!!」
「トッシー?」
ここは真選組、屯所内。
神楽は最近よく遊びに来るようになった。
「……トッシーじゃねぇ。」
土方はお気に入りのタバコを吸うと、深く吐きだす。
「やっと返事したアル!!遊ぼーヨトッシー!!!」
「勝手に人の部屋ん中入ってくんな」
「いいダロ別に!!それより見るアルネ!!」
少女は己の唇を指を指すと言った。
「銀ちゃんに口紅買ってもらったアル!!!!」
嬉しそうに、ちょっぴり恥ずかしそうに土方に見せつける。小さく柔らかそうな唇は、綺麗な薄いピンク色に塗られていた。
その姿に目を細めると少女の言葉を思い返す。
(銀ちゃん…ねぇ。)
「似合うダロ?」
得意気に神楽は土方に笑いかけた。
「お前そんなにアイツが好きか?」
「へ?」
「お前はいつも銀ちゃん銀ちゃん銀ちゃん。俺の前でもアイツの話しかしねぇじゃねぇか。」
土方はドサドサと机に書類を並べながら、神楽から目を背ける。
「トッシー?」
「その、唇に付けたもんだって俺じゃなくアイツに見せたらいいんじゃねえの?」
気にくわねぇ…
コイツはアイツしか見えてない。
「これはっ……!!」
「帰れ」
らしくもない嫉妬
背中から聞こえる少女の声。
「トッ……」
「ガキには興味ねぇ。そんなもん見たかねえよ。さっさと帰れ」
そっけない言葉をぶつける。
情けないが、押さえれない感情を悪くない神楽に当たってしまう。
「邪魔したアル…。」
神楽はポツリと言うと扉の方へと向かう。
土方は出て行こうとする神楽に返事をする事なく、書類に手をつけた。
――――――――
ガラガラ
「ただいまアルヨォ」
「おう神楽。元気ねぇじゃねえか、どうした?」
「何でもないネ。」
「まあいいけど。そういや俺が買ってやった口紅どうした?」
「捨てたアル」
「はいいい?おまっあれは100円もしたん……神楽?」
「いらないアル。」
あなたに
少しでも近づきたくて
溢れる涙
END