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□Night of a full moon
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今夜は十五夜。
そして・・・
*Night of a full moon*
「もうそろそろだわ・・・」
サクラが空を見上げれば、夜空には満開の星。
そして、丸い丸いお月様。
サクラは、竹から生まれた女の子。
いわゆる"かぐや姫"である。
この世界には"かぐや姫"と呼ばれる女の子が百年に一度産まれるという。
理由はわかっていないそうだが。
かぐや姫は、わずか三年で大人になる。
いや、性格には16になる。
だから、もといた月に帰りフィアンセを見つけるのだ。
そのフィアンセと見合いをするために、かぐや姫は竹を通じて月から地球へと、いわば修行にくるのである。
「かぐや姫・・・」
「帝様・・・」
サクラは、つい先週まで月に帰ることになんの疑問も拒絶もなかった。
むしろ当たり前だと思っていた。
しかしこの帝に会ってからは、月に帰るのが嫌になってしまった。
いや、月に帰るのが、ではなくフィアンセに会うのが、嫌になってしまったのだ。
理由は簡単。
要は、一目惚れというやつなのである。
その帝はサスケといい、それはそれは男とは思えないほど美しかった。
サクラは面食いなので、すぐさも一目惚れしてしまったのである。
逆にサスケも、いやサスケからサクラにアプローチがあった、と言った方が正しい。
サクラは月に帰ることがわかっていたので、外には出ずに暮らしてきた。
しかし、たまたまその日になかなか帰らないお爺ちゃんを心配したサクラが外に見に行ったのをサスケが偶然にも通りかかり恋に落ちた。
そして、サクラの家に手紙が届いたのである。
"僕と婚約してほしい"
とだけ書かれた手紙が。
サクラは最初は拒絶した。
婚約などできない。なぜなら自分はもうすぐ月に帰るから、と。
しかしそれでも帝は諦めず、とうとうサクラの家に来た。
そこでサクラはサスケに惚れたのである。
「かぐや姫・・・いや、サクラ・・・どうしたら月に帰らずにすむ?」
もう夜空には満月が上っているというのに、サスケはサクラに聞く。
「そんな方法はありません・・・今までかぐや姫として産まれた七人の姫達は皆、愛する人と結ばれずに月に帰って行きました。七百年もの間、その方法が見つからなかったと言うことは、その方法はない、と言うことになります。」
「しかし・・・この家にはうちの兵を呼んだが、これで太刀打ちできるのか・・・」
サスケは後ろを向いた。
後ろには数千の兵が弓を従えて待機している。
「帝様・・・私はうれしゅうございます。あなた様に愛されて。愛を知らずに帰ろうとした私に愛を下さって・・・私は、私は・・・とても感謝しております。」
「やめろ・・・別れの言葉など聞きたくない。」
「しかし・・・」
「帝様ーー!!空から・・・」
一人の兵が指を指したその先には、月からこちらに近付いてくる天女達がいた。
「矢を放て!!」
サスケの命令で兵達が矢を放つが、天女達には当たらず。
天女達は徐々にサクラのもとに近づいてきた。
「姫・・・お迎えにあがりました。」
「嫌・・・帰りたくない・・・」
「姫・・・」
天女達はなにやら話し合うと、水色の羽織り物を出した。
「しょうがありません。これは使いたくなかったのですが・・・」
天女の言葉を聞いたサクラの顔色が変わった。
「もしやそれは・・・・・わかりました。私、月に帰ります。」
「では、こちらへ。」
「帰ります。でも・・・その前に・・・」
そう言うとサクラは今まで自分を育ててくれたお爺ちゃん・お婆ちゃん。そしてサスケの方を向いた。
「爺や婆や。今まで育ててくれて本当にありがとう・・・・・」
「サクラちゃん・・・・」
「帝様・・・いいえ、サスケ様・・・・・私、絶対に忘れません。あなた様と過ごした五日間の事・・・・・」
「サクラ・・・」
「いつかまた、どこかでお会いしましょう・・・・」
「姫。参りましょう。」
「ええ。あっ、そこに置いてある手紙には不老不死の薬が入っております。帝様と爺や婆やの分とありますから、皆さんで飲んでください。」
「サクラ・・・・・・」
サクラはそう言うと、天女たちと共に月へと帰っていった。