小説
□3:蟲
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「なあなあ、なんでムシって[虫]と[蟲]があんの?」
授業中、突然千昭は前の席の功介に疑問を投げかけた。
「は?なに?」
急に話しかけられて功介は振り返る。
「ホラ、な?」
千昭のノートには[虫][蟲]の2文字が並べて書いてあった。
漢字に弱いことは知っていたがなぜ急にそんなことを言い出したのだろう。
「さあな、こっちは一匹じゃないんだろ、虫が」
功介が「蟲」を指さしながら小声で軽くあしらう。
「ふーん。じゃあ、俺らはこうか。」
そう言って千昭は[人]という字を三つ書いた。
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03:「蟲」