短編部屋

□食欲旺盛
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ベッドの上には勝手に跳ねる灰色の塊。ボールのような猫。頭だけの、猫。先ほどから猫はベッドを跳ねて跳ねて仕方がない。いつもと様子が違うのはすぐにわかる。そして、その理由もわかる。


『チェシャ猫…』


「なんだい、アリス?」


『カラスを食べてるチェシャ猫の姿は、ちょっと見たくないな…』


窓の向こう側。どこにでもある電線にどこにでもいるカラスの姿。チェシャ猫が跳ね出したときは何事かと思ったが彼の視線の先にはカラス。もちろん、視線なんて言っても目元が見えないチェシャ猫が具体的に何を見てるかなんてわからない。


『でも、チェシャ猫も猫なのね〜』


普通の猫が食べようとするのは、せめてスズメだろうけど、という心の声は無視。





■食欲旺盛■





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