オモテU
□それから目覚める獣たち
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一度目のキスは事故だ。
しかも奇跡的な確率で起こった、キスと呼んでいいのかもわからない、一瞬唇がかすめた程度のもの。
「ご、ごめん」
あの時はつい反射で謝ってしまったけれど、珍しく驚いた顔したままのゾロに、こちらが何か変なことを言ったのかと戸惑うほどだった。
いやいやいやいや事故だから事故!
どう考えても事故、不幸な事故!
でも、それ以来意識するようになった。
食事の時も昼寝の時も、あの唇が触れたのかとか、一瞬でもむにっとした感はあったなぁとか。
ゾロはあれ以降も変わった様子はなくて、私ばかりドキドキしたりぼーっとしたり。
勝手に意識してバカみたい。
ゾロは何とも思ってないのに。
そうか、意識してるの私だけか…
それはそれで、なんだか空しいな。