オモテU
□眩暈
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片想いってこんなに苦しかったっけ。
この船に乗ってしばらく、気が付けば剣士に恋をしていた。
ささいなことに一喜一憂して、ドキドキする毎日。
連ねた時に比例して膨れ上がる想いと、同時に増していく息苦しさ。
誰にも打ち明けることなく、ずっと隠してた。
同じ船だから。
近くに居られるから、それで良かった。
時折話して、いつも目で追って。
だけど次第にぶつかる視線。
少しずつ、少しずつ、長く、長く。
それは私だけじゃなくて、ゾロから向けられることもある。
振り返ると向けられている両の目。
どうして、なんで。
だって剣士は野望が一番、お酒が二番でしょう。
女になんか目もくれないはずなのに。
すれ違ったとき、そっと触れた指先。
その理由を問いたくても言葉には出せなかった。
期待して、ショックを受けたくないもの。
一時の気まぐれに振り回されて、傷つくのが怖い。
このまま、このままでいい。
側でずっと、焦がれてたい。
そう思って、溢れそうな想いを何度も抑え込んでた。