短編集

□俺に溺れろ!
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「ねぇ、聞いた?今日、あの日高武人が学校に来てるんだって! 」

「ホント?一目でもいいから会えたらいいなぁ」

昼時の食堂はうるさいほど賑やかで、話声が嫌でも耳に入ってしまう。

そのことに真城慶太は苛立ちを隠せないでいた。

「ったく、日高日高うるせぇな。そんなに珍しいかよ」

「……あのなぁ慶太。俺らにとって日高は高校のときからの友達だけどよ、あいつらからすれば今や人気雑誌の表紙を飾る有名モデルだぜ」

仕方ないだろ、と慶太の友人の彰吾は言う。

「モデルねぇ……」

日高は確かに高身長でスタイルもよく、なによりイケメンだ。
モデルのバイトを始めたと聞いたときは、こいつは有名になるだろうなと思った。
今や超売れっ子。駅やビルにポスターを見かけたこともある。
仕事が忙しいのか大学に来れる日もそんなに多くなく、単位が危ないとぼやいていた時もあった。

そんなに仕事が忙しいなら学校をやめちまえばいいのに。
もうモデル1本で食っていけるはずだ。
……だが、その一言が慶太には言えなかった。

「日高、昼飯買って来たぞ」

慶太は食堂で昼飯を済ますと彰吾と別れ、第二図書室の個別自習室へと向かった。

ここは第一図書室と比べ、本館から離れているせいか利用生徒は少ない。
有名すぎる日高にとっては絶好の休憩場なのだ。
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