短編集

□キセキ
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初めて会ったとき、綺麗だと思った。

男に綺麗だなんて変だけど、雨が降っているのに傘もささず、空を見上げている姿がどこか神秘的で、そこだけ別世界のような気がしたんだ。

俺は無意識に近寄って、さしていた傘を傾けていた。

「あのっ……」

傘を傾けたはいいものの、何を話せばいいのかわからない。

ゆっくりと彼が振り向く。

自分よりも1、2個年下だろうか。
中学生、よくて高校生にしかみえない。

「あ……え?……誰? 」

ごもっとも。

「悪い。その、気になったから」

その少年はジッと俺を見つめる。
その視線になぜか耐えられなくなった俺は傘を無理やり少年に渡す。

「俺、家近いから……使って」

言い逃げをするように、俺は走り去った。

その後になって後悔したのは言うまでもない。


どうやら俺は彼に一目惚れしてしまったようだったから。
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