Chain

□第一夜
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「ここか……」



焦げ茶色のローブをまとった一人の少年が、地図の書いてある小さな紙切れを手にぼそりと呟く。

賑やかな街道を抜け、大通りを真っ直ぐに進むと見えたのは他の家々とは比べ物にならないほど大きい龍牙崎学園。

そここそが少年の目的地だった。

龍牙崎学園はこの辺りでは有名な魔法学校であり、小中高を一貫する巨大な学園である。

その学園に今日、少年は入学した。

入学といっても他の生徒はとっくに入学している。

少年だけある事情で遅くなり、途中入学となったのだ。





「待ってたよ。藤峰燈麻君」



学園に入り、案内されたのは理事長室。

そして少年の前にいるのはこの学園の理事長である龍牙崎康太郎だ。

若くもなく老いてもいない、年齢不詳の謎が多い男というのがほとんどの人の第一印象だろう。

クスリと笑った表情からは真意がまったく読み取れない。

また、理事長としては温厚すぎるように感じた。

こんな大きな学園を築きあげたとは到底思えないほどに。



「藤宮麻」



少年、藤宮は訝しげな表情をしつつ龍牙崎の言葉を即答で正す。

まだ、本当の名を出すわけにはいかない。

本名は絶対に隠さねばならない。

必ず、そして的確に目的を果たすために。

目的を果たすためなら、何でもしよう。

そう決めたのだ。そしてどんなものでも利用しよう、と。

藤宮にとっては龍牙崎でさえも利用価値のある人物なのだ。



「そうだったね。藤宮君」



龍牙崎は悪びれた様子も見せずに、微笑みを浮かべた。





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夜月
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