リクエスト小説

□一寸先は闇
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一寸先は闇


氷帝学園3年B組15番、滝萩之介。
宍戸との試合に負けて以来、正レギュラー復帰はかなわなかったが、
暖かい仲間達の励ましで今も氷帝学園テニス部の部員として頑張っている。

全国大会3回戦で因縁の青学に敗退。
全国大会ベスト8という記録を残し、俺たちの青春は終わった。

「終わっちまったな、侑士…」
「せやな…」

試合の後、レギュラー達はそれぞれの思いを互いに伝え合っていた。

「長太郎…来年こそは、全国制覇しろよ?」
「…は、はい!頑張ります!」

「くっやC〜…でも楽しかったからいいや」
「相変わらず羨ましいくらい前向きですね…」
「ひよC、来年は頑張ってね」
「当然でしょう…勝ちますよ、来年は」

そんなレギュラー陣の姿を見ているとふいに何かもやもやとしたものが渦巻いた。

(俺もあの中に…)

一瞬頭に過ぎったその思いをどうにか押さえ込む。
確かに試合には出られなかったけど、俺はやるべき事はやったんだ。
宍戸に負けたのは悔しかったけど、それはアイツが悪いわけじゃないしね。

そうやってどうにか自分の感情を抑え込んでいると、向日が俺の所にやって来た。

「たーきィ」
「…何?岳人」

向日は俺の顔を見るとにっこりと微笑んだ。

「俺はお前がいてくれて良かったと思ってるぜ?」
「えっ…?」

急にそんなことを言われ、滝は驚いた。
そして喜びが押し寄せてくるのを感じた。

「…あ、ありがとう、岳人」

そんな様子を見ていた他のレギュラー達も滝の周りに集まってきた。

「ホンマ、お前がいてくれて助かったわ」
「俺、お前の分まで戦ったからな…」
「俺も滝のこと好きだC〜」

次々にかけられる言葉に滝は涙を流しそうになる。

「みんな…」
「俺様もお前には感謝してるぜ、萩之介…」

その声にその場にいた全員が振り返る。
そこにいたのは我が氷帝学園不動の部長。

「跡部まで…」
「レギュラー落ちしてから色々やらせちまったからな」
「い、いや…俺だってみんなの役に立てて良かったよ」

(みんな…俺のことちゃんと仲間だと思ってくれてたんだ…)

「あ、あり…」
「ホント、良いマネージャーだよな!」

俺がお礼を言おうとするのを遮って向日が言った。
(…え?)

「せやなぁ、こんな良いマネージャー他におらんやろな」
「あぁ、俺もそう思ってたぜ」
「えっ…ちょっとみんな…?」
「滝ってマネージャー仕事似合うよね〜」
「だよなぁ、差し入れとかしてくれたしな!」
「あの…俺って…」

1人状況について行けないでいると、跡部がポンッと肩をたたいた。

「お前にはみんな感謝してるってことだ。ありがとよ、マネージャー」

そう言うと、レギュラー達はおのおの帰り支度を始めた。
1人取り残された滝は呆然とその様子を見ていた。

(そうか…俺って…)

「…マネージャーだったんだね……」

一筋の涙が頬を伝っていく温もりを、滝は感じた…



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