リクエスト小説
□束縛と愛
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束縛と愛
「貴方は私のものだということを自覚してくださいね?」
俺はいつも鎖につながれている。
それは目には見えない透明な鎖。
でも確実に俺のことを束縛し、俺が自由になることはない。
―――――鈍く耀く鎖。
「あれだけ他の人には近づかないように言って聞かせたはずですが?」
鋭い瞳が俺を刺す。
「あれは…別に凛とはそんな関係じゃ…」
「お黙りなさい。言い訳などききたくないですね」
「永四郎!」
永四郎の耳に俺の言葉は届かない。
「貴方は優しくされれば誰にでもすぐに尻尾を振るような男なんですか?」
「別にそんなことッ…」
「ではなぜ平古場君に抱かれていたんです?貴方は私がいないからと言って他の男についていくような人なんですか?」
有無をも言わさぬ永四郎の視線。
俺は蛇に睨まれた蛙。
「あれは、俺が転びそうになったところを…」
「言い訳は聞かないと言っているでしょう?」
永四郎の長く伸びた手が俺の首を捕える。
「永四郎っ…!」
「二度と同じことがないようにしっかりと躾しましょうかねぇ、甲斐君」
まるで蛇の毒牙に侵されるように、じわじわと首を締められる。
「やめッ…えいし、ろ…」
「煩いですよ」
視界に靄がかかったように永四郎の顔がぼやけていく。
これで鎖から解放されるのか…?
頭に過る“自由”。
遠くに聞こえる永四郎の声。
「……私には貴方しか居ないのに…」
「…ぃ…君……」
心地よいともいえる闇の中で小さな声を聞いた。
まるで怯えた子供のような、声。
「…甲斐君…?」
「えいし、ろ…?」
ゆっくりと光が戻ってくる。
視界には不安げな顔をして見つめる瞳。
「すいません…私はまた…」
先ほどまでとはまるで違う表情。
鋭かった瞳は光を失い、不安に濡れている。
覚醒した意識の中で、俺は永四郎の頬を撫でた。
「俺は、大丈夫さぁ…」
「すいません…甲斐君…」
その鎖は純粋で美しく、俺にはとても重かった。
俺は…
その鎖の美しさに溺れ、その鎖の重さに沈む。
歪んだ愛の鎖から、俺はまた逃れることは出来なかった…