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□純粋な恋。【前】
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――奴良組本家にて。




「あ、リクオ様、おはようございます。」




「おはよう…首無。」




リクオ様と呼ばれた少年は、眠たい目を擦りながら挨拶を返す。




首無は、挨拶を終えると、玄関に向かい掃除を始めた。




「ふぅ、昨日より綺麗にしないとな。」




掃除をしながら呟くと、




「やっほー首無!朝からごくろーっ!」




と、大きな声が聞こえてきた。




そこには、ゆらの従姉妹で毎朝リクオと一緒に登校している優佳がいた。




「優佳さん!おはようございます。」




首無は、笑顔で挨拶をした。




「うんっ、おはよー!」




優佳も笑顔で挨拶を済ますと、本家に入っていった。




「はぁ……。」




首無は、優佳ともっと話したかったのか、ため息をついていた。





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――放課後。




「あ、奴良君、優佳を借りてくで。」




ゆらがリクオに声をかけると、優佳をつれて教室を出て行く。




「うぇえ〜、またお説教かいな〜?」




「アンタのためやねんで!」




優佳の嫌そうな声に、ゆらが一喝した。




「あ、うん……。どうしたのかな?」




リクオはきょとん、としながら首を傾げた。




一方ゆらたちは、




「ほな帰るで。」




「うん。……で、何なん?」




「何なん?ちゃうわ!!」




優佳の問いに、ゆらが怒鳴った。




「わざわざ毎朝迎えに行く必要ないやろ!
あそこは妖怪の溜まり場やねんで!?




「そんな、不良の溜まり場やねんで〜みたいに言わないでよ。
大丈夫、うちも陰陽師やし。それに、リクオ君面白いし…。」




優佳は、ゆらと一緒に転校しており、初めて声をかけられたリクオと、仲良くなっていた。




その後何やかんやで、リクオが妖怪だと分かったものの、友情は壊れてなどいなかった。
優佳は、苦笑を浮かべながら言い返すも、




「何言うとんねん!いつか喰われるかもしれへんで!それにな、

竜二が知ったら、本家に連れ戻しコースやねんで!?




ゆらの最後のセリフに、ぐっと言葉につまる優佳。




「たいがいにしぃや。私は別に反対せぇへんけどな…、アンタのこと心配してん。」




「うん…、そやな…。せっかくゆらと転校したのに京都に戻るなんて嫌やしな……。」




優佳は諦めたかのように、頷いた。




「分かればえーねん。私の兄貴の性格知っとるやろ?許婚やしな。




「うっ…、それは言わんといて……!親が、勝手に決めただけやし…!」




ゆらの言葉に、優佳は焦りながら言った。




「まぁ、あんま奴良君に関わらんよーにな。
ほな、今日特売日やから、はよ行くで。」




「うん…できる限り……。てかまた!?
本家は金ボンボンやのに、何でうちらは貧乏やろなぁ…。」




はぁ、とため息をつく優佳。




「何ブツブツ言うとんねん!遅刻するで!」




「学校やないんやから…。」




走りながら言うゆらに、苦笑を浮かべながら追いつく優佳。





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――奴良組本家にて。




「ただいまー。」




「お帰りなさいリクオ様。…あれ、優佳さんは?」




優佳がいないのを気づいた首無は、リクオに尋ねた。




「藍田さんなら、花開院さんに連れてかれたよ。」




「そうですか……。あ、もうすぐでご飯が出来上がりますよ。」




首無は残念そうに呟くと、リクオから離れるように去っていった。




「…首無……。藍田さんのことが好きなのかなぁ…。」




首無の寂しそうな背中を見ながら、呟くリクオ。




「あら、リクオ様。こんなとこで突っ立ってどうしたのよ?」




声をかけたのは、毛倡妓だった。





「毛倡妓!?ううん、何でもないよ!

(ボクに…出来ることはあるのだろうか――?)」




リクオは、心中で呟いた。
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