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□純粋な恋。【後】
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――優佳のアパートの近くにて。




「く、首無……。」




「君たちは、そういう関係だったんだね…。邪魔をしたよ。」




首無は、ポツリと静かに呟いた。




「…へぇ、妖怪のわりには、礼儀がいいじゃねーか…。」




竜二の嫌味に首無は、耳に入らなかったのか返事をしない。




「く、首無!許嫁と言うてもな……!」




「ごめん優佳さん、今日は帰るね。」




優佳が最後まで言うのを、遮るように言うと走り出す首無。





「あ…首無!」





垣間見た首無は、泣きそうな表情をしていた――。




「さぁて優佳……、おい、何アイツを見てんだ?」




「竜二……、すまん。今日は帰っとくれ!」




優佳は、首無を追うように走り出すも、




「あっ、オイ!行くんじゃねぇ!」




竜二に腕を引っ張られ、気がつくと、竜二の胸の中にいた。




「りゅ、竜二…?離しとくれ……、」




「黙れ。お前はオレのもんだ…。分かってるよな?」




言いかける優佳を、竜二が遮りながら、強く抱きしめる。





「……えーかげんにせえ!お前の嘘吐きは、聞き飽きたんや!」





優佳は竜二の顎にアッパーを喰らわせ、やっと離す竜二。




「イテッ!テメェ、覚えてろ!それよりお前ょォ…、アイツに惚れてんだろ?」




「分かってんなら、聞かんといてや!」




竜二の問いに、優佳は涙目で言い返す。




「何泣いてんだ。オレは泣く女は嫌いだ。」




「やかましわ!アンタには関係ないやろ!」




呆れる竜二に、優佳は睨む。




「フン…、威勢だけはいいな。――早く追いかけろよ。」




竜二はそういうと、優佳の背中を押した。




「竜二……、おおきに!


アンタが嘘吐きやなかったら、好きやったで、多分な!




優佳は振り返り、柔らかい表情を浮かべながら言うと、再び走り出した。




「…チッ……、るせぇよアホ女が…。」




竜二は顔を赤くしながら呟くと、予約していたホテルへと向かって行った。





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――奴良組本家にて。




「ただいまー。花開院さん、遅れてゴメン!」




リクオが帰宅すると、ゆらに謝る。




「えーよ。それより首無?が、帰って来ぇへんって騒いでるで。」




ゆらは、座っていた縁側から立ち上がり、今の状況を報告した。




「えっ?どうしたんだろ…。あっ、つららに毛倡妓!」




「あら、リクオ様、お帰りなさい〜。」




「リクオ様、もーすぐでご飯ですよ!」




縁側に、運良く通りかかった毛倡妓とつららに、首無のことを尋ねるリクオ。





「首無知らない?」




「そうね〜、さっきスーパーの前で優佳ちゃんと会ったから、置いていったわよ。」




「何やってるのよ、毛倡妓!」




呆れるつららに、苦笑を浮かべるリクオ。




「そっか、ありがとう!花開院さん、ボクの部屋に来てくれる?」




「ん、分かったで。」




ゆらは頷くと、リクオについて行った。




「どうぞ。」




「お邪魔します…。」





「花開院さんって、」




「奴良君って、」






言い掛けるも、ハモる2人。
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