▼other..
□出会いは雨から。
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「――チッ、雨かよ…。」
不機嫌そうに呟くと、懐から傘を出し、さす竜二。
この日、竜二は妖怪退治の仕事に出掛けていた。
いつも一緒にいる魔魅流は、用事があったのか、同行していない。
妖怪退治の帰りに、天気予報通り、雨が降ってきた。
「ったく、さっさと帰るか…。」
独り言のように呟くと、傘をさしてる周りの中に傘をさしてない人がいた。
「――何だぁ?何やってんだオメェ。」
竜二は何故か、勝手に体が動いたかのように、相手の腕を引っ張った。
「――あん?何やアンタ。」
振り向いた少女――優佳は、竜二を見るなり、睨みつけながら言う。
「テメェ、風邪を引きてぇのか?傘はどうした?
(――何で、オレがこんなことを…。しかしコイツ、綺麗な顔してんな……。
ハッ、何を言ってんだオレは。)」
「アンタには、関係ないやん。どーせ体目的なんやろ?死ねボケカス!」
優佳は、言い慣れてるかのように、言うと竜二の手を振り払い歩き出す。
「――おいテメェ…!死ねボケカスとは何だ!?
別にオレは、テメェの体目的じゃねーんだよ!」
ブチッと切れたのか、竜二は再び腕を取りながら、言い返す。
「ほな、何なん?あとうち、優佳やから。テメーとか呼ばんといて。」
何なん、と問われ竜二は、しばしの間黙っていた。すると、
「…ハッ、オレが聞きてぇよ…!あとオレは、花開院竜二だ。」
竜二らしくないセリフが出てきた。
「――アンタ、頭だいじょぶなん?」
「うるせぇ!……優佳よぉ、オレについてこい。」
竜二はそういうと、いつの間にか雨が止んでいたのか、
傘をとじ優佳の手を、引っ張っりながら歩き出した。
「ちょっ…、何なん!?初対面に対して、よく手を握ってられんなアンタ!」
優佳は、されるがままに竜二について行った。
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――花開院本家。
「何やここ…。」
「ここは、オレの家だ。お前は、ここで過ごせ。」
「ハァ!?いきなり何言うとんのアンタ!?何で命令口調!?」
優佳の言葉を無視し、中に入る竜二。
「あっ、竜二!帰って来たんや……、
何誘拐してん!?捕まられても知らんで、私!!」
そこには、庭で修行をしていた妹・ゆらがいた。
「丁度いいな、コイツを見てろ。オレは、二十七代目に会ってくるからな。
あと、勝手に犯人扱いしてんじゃねぇ!」
竜二は、吐き捨てるように言うと、庭をあとにした。
「…何や、女の子をほっぽりだしよって!あ、私はゆらやで。」
ゆらは、呆れながら兄を見送ると、笑顔で優佳に自己紹介を済ませた。
「あ…、うちは優佳や。ゆらちゃん…、ね。アイツと仲えーん?」
優佳の問いに、ゆらは顔を歪めた。
「全っ然!どーやったら仲よく見えん!?アンタも竜二の彼女なん?」
優佳も、顔を歪めていた。
「ハァッ!?彼女!?ありえんし!何でそう見えん!?」
「「……………。」」
しばしの沈黙のあと、2人は爆笑をした。
「アハハ、そやろな〜!あんなバカ兄貴に、可愛い彼女出来るわけないわー!」
「そっちこそー!あんなやり取りだけで、仲ええとか失言やったわー!」
爆笑をし終えると、先に口を開いたのはゆら。
「なぁ、優佳さんて呼んでもえーん?竜二とタメぽいし。」
「うん、えーよ。うち18歳やで。」
「ほお、竜二と同じやん。私のことは、ゆらでええで。」
「ほな、ゆらはさ…、竜二と何の関係なん?」
「兄妹やでー。あっ、アイツ嘘つきやから、気をつけたってなー。」
「うん、おおきにー!あっ、戻ってきよった。」
優佳の言葉に、振り向くと竜二が、こっちに向かって歩いてきた。
「あぁ、まだここにいたのか。まぁいい。そうだ…、今日からお前は、オレの許嫁だ。」
「「――はい!?」」
竜二の爆弾発言に、ゆらと優佳はハモった。
「なっ、何言うとんの!?今度は、どんな罪に問われたいん!?」
「アホかアンタ!?何でそーなるん!?やっぱ、体目的やろ!!」
「か、体目的……!?見損なったでバカ兄貴――!!」
優佳たちの勝手な想像に、竜二は呆れながら、
「おい、ちゃんと話を聞け!さっき、二十七代目に会ってくるって言ったじゃねーか。
その時、許嫁にしたい女がいると言って、許可が下りただけだ。
――あと、バカ兄貴とは何だ、ゆら!」
すらすらと言いつつ、ゆらに怒鳴る竜二に優佳たちは、
「な…、何勝手に決めとんのー!?」
「ホンマやで!!しかも体目的なんやろ――!!」
と、叫びに近い大声で言った。
「何で、体目的になんだよ!!ただオレは……、
純粋にお前に惚れただけだ。」