復活小説
□誤解。
1ページ/9ページ
「なーっ、お前さ、学校で付き合いたい女とかいねーわけ?」
並盛中学校の放課後の教室の中で、クラスの男の人がツナに話しかけた。
「ええっ!?い、いきなり何を…!」
ツナは当然のごとく、顔を真っ赤にしながら慌てる。
「だってよォ、何か気になんじゃんっ!お前この1年間ですっごい変わったんだしな〜。」
「あ、オレも思ってた!」
――そう、ツナたちはもう中学3年になっていた。
「そ、そうかな…?自分じゃ分からないな…アハハ。」
ツナは苦笑を浮かべながら笑う。
「で、どうなのよ。やっぱ京子ちゃんかー?」
また男が質問を投げつけた。
「……あ、えっとぉ〜…。」
ツナは戸惑いを隠せずにたじろぐ。
*****************************
「さっ、帰ろ帰ろ〜♪」
上機嫌そうな表情を浮かべながら廊下を歩く少女は優佳。
自分の教室に入ろうと、閉まっていたドアを開こうとすると、話し声が聞こえたのか、
「んっ…、ツナに、他の人の声…?むむ、気になる!」
優佳はついしゃがみこんだまま、ドアに耳を当ててすます。
「何の話してるんだろー?すっごい気になりますねー!」
などと独り言のように呟いたのだった。
********************************
「言っちゃえよ、この際!ホラホラ!」
クラスの男子はニヤニヤしながらツナが言うのを急かす。
「(何々、何の話!?)」
優佳は途中から聞いてなかったのか疑問を心内で呟く。
「お、オレ……は……!
藍田ちゃんと付き合いたいなー…って…。」
その瞬間、教室の中からはワァッ、と歓声の声があがっていたが、
優佳のいる廊下には凍りついているかのように冷たい空気が流れていた。
「(……何、それ…。ツナ…ツナ…。
そんな、ツナ…藍田のことが好きだったんだ…!)」
優佳はさっきツナが言い放った言葉が耳にこびりついていて離れない。
「(……藍田は確かに面白くて変わってるけど優しくて可愛い人…。
…分かってる、あたしはツナに振られたんだぁ…。)」
ツー、と一筋の涙を流し、それをゴシゴシ、と乱暴に拭う優佳。
優佳は藍田とは幼馴染であり親友でもあった。
「(――あたしに出来ることは…、
ツナの恋の応援をする…こと…。出来るかなぁっ…?)」
心の中で呟くと深い息をし、ドアを開き、
「さーっ、帰ろっとー!あれ、みんな何で集まってるの?」
と何もなかったかのように精一杯笑顔を作ってみせる優佳。
「あっ、優佳…ちょっ、みんな!さっきのことは言わないでくれよ!」
慌てて口止めをしようとするツナに、優佳はぎゅ、と拳を握り堪えるようにしながら、
「え、なぁに?何かすごい気になるんだけどーっ?」
と作り笑いで尋ねた。
「ツナ、ちょーどいいじゃん!アイツと仲いいなら協力してもらって損はねーよ?」
「いやいや、そうでなくて!」
クラスの男の言葉に、ツナはぶんぶん、と手を振り否定するが、
「まーまー何とかなるだろ!なぁ、藍田と仲いいんだよなっ?
ツナがさー、藍田と付き合いたいらしーってさ!
だから協力してくんねー?あ、もちろん他のヤツらには極秘で!」
男は頭を下げながら頼み込む。優佳はその様子に戸惑いながらも、
「え…あ、いいよ…。
ツナ、藍田のことが好きなんだぁー!知らなかったよー!」
と精一杯元気な声で言い放った。