緑龍-リョクリュウ-

□呪縛
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ジタンは、尻尾を振っていた。
比喩ではない。
何故なら彼はジェノムだから。
ジェノム族は人工体。
オマケに今では、玩具で愛玩動物(ペット)だ。

「んぅ…、あッアァ゙……」

声をあげる。
抑える事を全く知らない、甲高い声。

部屋には彼一人。
他には誰も居ない。
あるのはキングサイズのベッドと、グロテスクな大人のオモチャ。

「はぁ、ん……あ、…ッ」

当然、それらは彼にも使われているわけで。

「どうした、仲間の元に戻るのではなかったのか?」

明らかな揶揄。
ガーランドが部屋に入ってきた。
けれどジタンはチラとも見ようとせず、ただ快楽を追うことだけに集中しているだけだ。

それを、面白そうに見つめる男。

「……ッも……たのむ、よ」

ジタンが、懇願する。
うつ伏せに足を開き、しきりに前を弄っている。
高く上げた腰はガーランドに向けられていた。

「やはり、お前で間違っていなかった」

悦に入った声で呟き、ベッドに腰を降ろす。
ギシリという音で、初めてジタンがガーランドを見た。

欲情した瞳は、しかし何も映していない。
今彼から見て取れるのは薄汚れた性欲だけだ。

「クジャは、好みから外れてな。大人に成り過ぎた。所詮は失敗作、か」

ジタンが、"弄ってくれ"とばかりに腰を振る。
つい先日まで処女だった場所を自分で広げている。
蕾では、ガーランドが気紛れでいれたバイブが蠢いていた。

「そうだ。お前は学習が早い。だが、まだまだだ」

黒手套を嵌めた手は、迷う事なくバイブを押す。

「あッ、…ンァアっ
「もっと喘いでみせろ」

そう。
苦しいそうに。
そして、愉しそうに。
ガーランドは飢えていた。


暫くは身悶えていたジタンだったが、やがて後ろに手を伸ばす。
仰向けになり、自身を扱きながら、バイブをも自分で動かした。

「とんだ淫乱だ」

それでもまだ足りないらしかった。
バイブに繋がるリモコンを手繰り寄せ、振動を強にする。

「ククク……」

ガーランドは舌なめずりをした。
今のジタンには大量の媚薬を与えてあるが、どうやらそれだけではないようだ。

「素直だな。それでいい。最高のジェノムだ、お前は」

褒美をやろう。
言いながら、尿道に刺さっていたカテーテルを引き抜いた。
少し勢いをつけて。

「ンァァァアアア――っ

痛みと解放感が同時に迫る。
ジタンは白濁を辺りに撒き散らした。

「ジタン。お前の仲間とやらが此処に向かっているぞ」

呼吸が整わないのか、ジタンは大きく胸を上下させている。

「一度帰してやろう」
「……、…」
「なんだ」

ジタンが口を小さく開いた。
何か言っている。

「………ッ、………」

耳を近付けてやると、今度も蚊の鳴くような声。

ガーランドはそれを聞き取ると、また
「ククク…」
と笑った。

「面白い。だが聞いてはやらん」

ガーランドは立ち上がると、ジタンの額に手を当てた。


「調教の最中だがな、この事だけ記憶を消してやろう」


けれど、また思い出す。

ガーランドは確信していた。
ジタンは思い出す。


「だが……」


今は時ではない。


今は、自分がジェノムだと言う事実に。

人間ではない、ただの作り物だという現実に打ち拉がれるといい。





ジタンは、

呪縛に気付かぬまま


堕ち続ける。




ガーランドが


死んだ今も




なお。




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