無人探査機
□終焉の始まりの始まり
6ページ/10ページ
「りのちゃーん!あれ、この人たちは?」
「君、双鳴くん?私は桃瀬 曖良。機動隊の……まぁ、下っ端よ」
「俺は海山楓。こいつの上司やと思ってくれたらええわ」
「きどうたい?それ、なんですか?」
「ああ、自分ら子供やしな。分からんかったらスルーしぃ。そのかわり静かにしてな」
「するー?」
「黙れゆーてんねん!だからガキは嫌いなんや」
「ご、ごめんなさい」
「別に気にすんな」
「あの、りのがおじゃまして、すいません。桃瀬さん、海山さん。ぼくは福吉双鳴、あの子は佐久間梨乃です」
挨拶としては及第点。しっかりしている、という少年唯一の特徴が垣間見えた。
「ううん、いいのよ」
「ええ子やな」
「あの、今どうなってるんですか? なにがあったんですか?」
その幼い疑問文には主語が存在しなかったが、彼女達にはそれで充分だった。
「自分らには関係ない。機動隊――俺ら警察のことやけど――俺らの問題や」
「りのどおすればいい?」
「じっとしてて。危ないから」
「外はどうなってるんですか?」
「関係ないゆーたやろ」
「教えてください」
膝の震えが止まらない。
「しゃーないな……。実は俺らもよう分かってないんや。だから一概に言われへん」
「あ、一概にっていうのは一言では、みたいな意味。海山センパイ、分かりづらいです。相手は5歳児ですよ?」
「りの、よんさいだよ?」
「訂正、4歳児です」
「何歳でもいいねん。そういう気配りは俺じゃなく桃瀬の担当や。問題はここに民間人、しかも子供がおるっちゅーことや。上に報告してみぃ、桃瀬だけちゃう、俺のクビまで飛ぶわ」
「……はい」
しかし実際問題として、海山どころか、桃瀬のクビさえ飛ぶことはなかった。
当時、日本政府の上層部は酷い混乱状態に陥っていた。某国の国家テロにより国会議事堂は破壊され、衆議院はほぼ壊滅状態。残る参議院も緊急会議どころか意味を成していない。