無人探査機
□終焉の始まりの始まり
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「としょかんってすごく広いねぇ……」
少女は佐久間梨乃。
まだ幼く、あどけなさの残る顔に漆黒の髪がなびいている。
「そりゃそうだよぉ。世界中の本が集まってるんだから」
反論する少年は福吉双鳴(そうめい)。
父は国家研究所の所長で、ある計画を遂行している最中だった。
「世界にはたくさん本があるんだよ」
と少年が言う。
世界各地で問題となっている人口増加問題。そして、人口と比例する様に増え続けているものが本だった。
「どれくらいなの?」
「わかんない。でも、多分いっぱいだよ」
「ふうん。りののおうち、本でいっぱいになっちゃうね」
もし、世界中の本が集まったなら少女の家どころか、彼女の住む町の大半が埋没する可能性も否定できない。
「そうだね」
少年はそこに触れたら負けだ、とでも言わんばかりにスルーしたが。
「ねぇそーくん、おそとどうしたの?」
最初からずっと頭の片隅に留めてあった疑問を、自分と幾つも変わらない、しかし自分よりも遥かに博識な幼馴染に尋ねる。
「わからない。でも、すごく大きい音が聞こえる……」
「二階なら見えるよ!」