無人探査機

□終焉の始まりの始まり
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 「りのちゃーん!あれ、この人たちは?」
 「君、双鳴くん?私は桃瀬 曖良。機動隊の……まぁ、下っ端よ」
 「俺は海山楓。こいつの上司やと思ってくれたらええわ」
 「きどうたい?それ、なんですか?」
 「ああ、自分ら子供やしな。分からんかったらスルーしぃ。そのかわり静かにしてな」
 「するー?」
 「黙れゆーてんねん!だからガキは嫌いなんや」
 「ご、ごめんなさい」
 「別に気にすんな」

 「あの、りのがおじゃまして、すいません。桃瀬さん、海山さん。ぼくは福吉双鳴、あの子は佐久間梨乃です」
 挨拶としては及第点。しっかりしている、という少年唯一の特徴が垣間見えた。
 「ううん、いいのよ」
 「ええ子やな」
 「あの、今どうなってるんですか? なにがあったんですか?」
 その幼い疑問文には主語が存在しなかったが、彼女達にはそれで充分だった。
 「自分らには関係ない。機動隊――俺ら警察のことやけど――俺らの問題や」
 「りのどおすればいい?」
 「じっとしてて。危ないから」
 「外はどうなってるんですか?」
 「関係ないゆーたやろ」
 「教えてください」
 膝の震えが止まらない。
 「しゃーないな……。実は俺らもよう分かってないんや。だから一概に言われへん」
 「あ、一概にっていうのは一言では、みたいな意味。海山センパイ、分かりづらいです。相手は5歳児ですよ?」
 「りの、よんさいだよ?」
 「訂正、4歳児です」
 「何歳でもいいねん。そういう気配りは俺じゃなく桃瀬の担当や。問題はここに民間人、しかも子供がおるっちゅーことや。上に報告してみぃ、桃瀬だけちゃう、俺のクビまで飛ぶわ」

 「……はい」

 しかし実際問題として、海山どころか、桃瀬のクビさえ飛ぶことはなかった。
 当時、日本政府の上層部は酷い混乱状態に陥っていた。某国の国家テロにより国会議事堂は破壊され、衆議院はほぼ壊滅状態。残る参議院も緊急会議どころか意味を成していない。
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