無人探査機
□緑ちゃんの藍色ノート
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僕はノートだ。
持ち主の緑ちゃんは、花の女子高生。
花の、って言っても、緑ちゃん自身にそんな雰囲気は全然ない。
というのも、緑ちゃんは小さくて、顔も童顔。
小中学生に間違われることも度々なんだ。
でも緑ちゃんの【高校】はキラキラした華やかな所だから、緑ちゃんは確実に浮いていると思うな。
僕は、そんな緑ちゃんの、お気に入りノートだ。
緑ちゃんは僕を友達に見せてはいつも、「可愛い柄でしょ」って自慢するんだ。
僕の顔には、『保健』という文字と、緑ちゃんの名前が書いてある。
そう、僕は『保健』のノートなんだ。
看護師を目指してる緑ちゃんは『保健』の授業の時、僕を机の上に出す。
そして、僕の中に大事なことを書いてくれるんだ。
少しくすぐったいけど、緑ちゃんの役に立ててるんだー、って実感する。
授業がない日も、僕の僕の出番はちゃんとある。
緑ちゃんは僕に書いた文字を見て、他のノートに写すんだ。
僕は、そんな勉強家の緑ちゃんが大好きだ。
緑ちゃんは、毎日僕を【学校】に連れてってくれる。僕は毎日カバンの中で、緑ちゃんの授業や、部活や、緑ちゃんの彼氏なんかを見ているんだ。
僕は、それも好きだった。
でも、僕の出番はあんまりこない。
週1回、いや、月1回くらいしかこないんだ。
僕の周りのノートは、来たと思ったらすぐお別れを言って消えてく。
僕は長居しすぎなのかな。
僕が緑ちゃんと出会ったのは、中学生の 時。
お母さんと一緒に来て、「可愛いからこれにする」って決めてくれた。
忘れもしない、大切な出会いなんだ。
あれから5年が経った。
今日、緑ちゃんは僕の最後の1ページを使いきった。
それでも緑ちゃんは、僕を持ち運んでくれるかな。
大切にしてくれるかな。
不安と期待で一杯だった。こんな気持ちは初めてだ。
緑ちゃんは、「この柄、気に入ってたのにな」と言って僕を暗い箱に入れ、閉じ込めてしまった。
僕がどれだけ緑ちゃんのことを呼んでも、 緑ちゃんは僕を外に連れ出してくれなかった。
僕は、捨てられたのかな。
暗い暗い箱の中で、僕はずっと沈黙していた。