無人探査機
□北風と太陽
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むかしむかし。ではないのですが、未来でもない、別の世界のお話。
「リイ様、早く支度なさらないと。会見に遅刻してしまいますよ?」
秘書の様な風貌をした女性が、声を掛ける。
薔薇の園で埋もれていた少女は振り向く。
声をかけられた少女は、あどけない笑顔でこう言うのだった。
「駄目よ、アンリ。だって、鳥さん達がお腹を空かせているんだもの」
「リイ、またギリギリじゃない……。アンリもほら、何か言ってやんなさい」
「申し訳ございません、シュテラ様」
「謝るなら最初からしなければいいの。貴女、そんなことも分からない?」
「も、申し訳ございません……」
「もう良いから。謝っている暇があるならさっさと支度なさい」
「はい、失礼しました」
私はフゥ、と溜息をつく。
この国の政府は、首相と宰相という、二つの役職から成り立っている。
普通、宰相となる女性が選ばれ、その夫が首相に自動的に就任するという制度だ。
私シュテラは、由緒正しき46回目宰相として、この国を任されようとしていた。
その相手、つまり46回目の首相は――。