Short storys

□潮干狩り
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「吉田さん、ごめん、待たせちゃって」
「いえ、いいんです。私も今来たところですから」
待ち合わせの20分前に着ていた少女は、遠くに少年の姿を見つけると、途端に顔を輝やかせた。

「潮干狩りって、行ったことないんだよね。吉田さんはあるんだよね?」
「あ、はい。家族と、何回か……」
「ふうん、さすが吉田さんだね」
「い、いえ……」
できたての初々しいカップルのような会話を続ける二人は、本当に人のようだった。
しかし、少年の方は人ならぬ者であった。
この世の理を捻じ曲げ人の存在の力≠喰らう紅世の徒=B
その怪物に存在の力≠喰われた者を、トーチといった。
少年は、トーチだった。

「あ、今日もお弁当作ってきたんですよ」
「そうなんだ、いつもありがとう」
「いえ……」
ただ、少年は紅世の徒#髟中の秘宝『零時迷子』を身体に宿した旅する宝の蔵、“ミステス”だった。
対する少女は、その事実を知っていながらも少年に惹かれていた。
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