無人探査機
□北風と太陽
2ページ/4ページ
「すてら、すてら!お腹空いたのー」
なんて言いながら、べそをかいている、女の子。
舌が回ってなくて、シュテラって言えてない女の子。
名前は、リイ。
私は、女性しか愛せなかったから。
46回目の首相は――、つまり、リイは。
この国で初めての、女性の首相だった。
「シュテラは、何でずっと怒ってるの?」
「何言ってるの、リイ。別に怒ってなんかないよ」
「うそだねー。リイには分かるもん」
「本当に勘の鋭い子。でも、今回はハズレ」
不満そうな顔をするリイ。
私は言葉を重ねる。
「本当よ、リイ。私はただ、貴女をね……?」
貴女を守りたいだけ。
民衆からの不満の声から、貴女を遠ざけたいの。
「今日の会見は、物凄く大事なの。自覚なさい」
「うー……」
ああ、拗ねちゃった。
私とリイは、巷で北風と太陽だ、と聞く。
うん、それは分かる。
リイは皆を優しく包む太陽のような存在。
私も、そうなりたいけど。
いや、宰相としてそうあるべきなんだけど。
誰にでも優しくしちゃうから、誰にも優しくできないだけ。
厳しさでしか愛情を表現できない、哀れな北風。