無人探査機

□北風と太陽
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 「すてら、すてら!お腹空いたのー」

 なんて言いながら、べそをかいている、女の子。
 舌が回ってなくて、シュテラって言えてない女の子。
 名前は、リイ。
 私は、女性しか愛せなかったから。
 46回目の首相は――、つまり、リイは。
 この国で初めての、女性の首相だった。

 「シュテラは、何でずっと怒ってるの?」
 「何言ってるの、リイ。別に怒ってなんかないよ」
 「うそだねー。リイには分かるもん」
 「本当に勘の鋭い子。でも、今回はハズレ」

 不満そうな顔をするリイ。
 私は言葉を重ねる。

 「本当よ、リイ。私はただ、貴女をね……?」

 貴女を守りたいだけ。
 民衆からの不満の声から、貴女を遠ざけたいの。

 「今日の会見は、物凄く大事なの。自覚なさい」
 「うー……」

 ああ、拗ねちゃった。
 私とリイは、巷で北風と太陽だ、と聞く。
 うん、それは分かる。
 リイは皆を優しく包む太陽のような存在。
 私も、そうなりたいけど。
 いや、宰相としてそうあるべきなんだけど。
 誰にでも優しくしちゃうから、誰にも優しくできないだけ。
 厳しさでしか愛情を表現できない、哀れな北風。
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